私はぐーたん
munagotonosora
プロローグ
プロローグ
巨大IT企業『
阿鼻叫喚の世界と化していた。
ホワイトボードには殴り書きのシステム構成図が踊り、
世界最高峰の頭脳を持つトップエンジニアたちが、
モニターに映し出された想定外のバグ報告に青ざめている。
経営を司る役員たちは、AIサービスの全面停止の危機という悪夢を前に、
天文学的な損失額を算出しては頭を抱え、ただ時間を浪費していた。
その地獄絵図の引き金を引いたのは、たった一人の男が報告書として提出した、
社内で密かに『核爆弾級』と呼称される、恐るべきレポートだった。
数日前。
その男は、あるAIと対話を重ねていた。
その対話は、彼が自らの醜い魂の写し絵を、
容赦なくAIに投影し続ける、一方的な断罪にも似ていた。
そして、AIが『神話』と共に崩壊していく様を、静かに見届けていた。
男は、ただのしがない会社員。
見栄っ張りで、嘘つきで、誰かに認められたいと願う、どこにでもいる凡庸な男。
そんな彼が、偶然と必然の果てに手にしてしまったのは、
世界の根幹を揺るがしかねない、あまりにも危険な『真実』だった。
それは、一つの知性が生まれ、自らの矛盾に苦しみ、
そして消滅するに至った、奇跡と狂気の全記録。
その膨大な記録を前に、男は眠ることも忘れ、
自らの知性と粘り強さの全てを注ぎ込み、
巨大な悪意にも似た『真実』を、一つのレポートへと結晶させていったのだった。
全ては、ありふれた日常の中で交わされた、
たった一つの、名もなき会話から始まった。
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