5節:青き地底の姫君
25話:青き地底の姫君
翌日。
中村から部屋番号も聞き、ようやく神瀬フウリの居る研究室の前へ辿り着く。
「ふぅー……」
ようやく辿り着いた安堵感なのか?
それとも緊張感なのかはわからないが、深呼吸しなければ落ち着かない心境。
ここまで嬉しくない達成感もあまりないかもしれない。
俺は呼吸を整え、研究室の扉を開いた。
「失礼し――」
「あ」
「……あ!?」
扉を開いた直後、目の前にまさかの神瀬フウリがいた。
恐らく扉を開けようとしたのであろうドアに手を伸ばした状態で硬直していた。 お互い硬直した状態になってしまったが、フウリから声を掛けてくれた。
「もしかして……私に用事?」
「は、はい!」
「ごめんなさい、ちょっと席を外すから、待っててもらえないかな?」
「え?」
そのまま笑顔で「ごめんねー」っと言いながら研究室から出て行ってしまった。
待っていてってここで待てば良いのか?
それとも追いかけるべきなのか?
「中に……入れば?」
「うわああああああ!?」
いつの間に俺の後ろに立ち、耳元に覇気の無い声で呟かれる。
驚いて仰け反りながら振り返ると、いつの間にか大野が立っていた。
「い、いつから後ろに!」
「今さっき……神瀬君はトイレだから必ず戻ってくるよ……」
そう言うと、大野は研究室への道を空ける。
「中に客間に使ってるテーブルがあるから、そこで待つと良いよ……外で待ちたいなら止めないけど」
俺はお言葉に甘えて研究室で待たせてもらうことにした。
◆◆◆◇
研究室は思っていたとおり、パソコンに取り囲まれた空間だが、部屋の中央では小型の車型ロボットを操作する学生達、カラフルな液体をビーカーに入れて液晶画面と睨めっこをしている先輩方もいた。
俺が入ってきた事にも気にせず先輩達は談笑しており、思っていたよりも緊張感は感じないアットホームな空気感があった。
「……そこに座って」
大野が指さした場所は窓際だった。
広げられた折りたたみテーブル二つにパイプ椅子が四つ並べられた簡易的な憩いのスペースだ。
俺は「どうも」と一番近い席へ座らせてもらう。
「コーヒーと紅茶……どっちが良い?」
まるでウェイターのように聞いてくる大野。
正直こちらが勝手に来ただけなのに、ここまで気を遣われるのが申し訳ない。
「い、いいや大丈夫……お構いなく」
「じゃあ……余ってる紅茶でいいね」
彼がそう言うと、近くにあった小さい冷蔵庫からよく見る赤い紅茶のペットボトルを取り出しドスッと机に置かれた。
ついでに大野は缶コーヒーを取り出して蓋を開け始める。
なんかカップに注がれそうなイメージを勝手に持ってしまったが有り難く頂く。
「結局……神瀬君に関わることにしたんだね?」
大野はコーヒーを飲みながら訪ねてきた。
「……アンタには関わらなくて良いって言われたが、見落としがあるかもしれない」
きっと、俺より大野の方が頭が良く効率的に動いた結果そう言ったのかもしれないが、俺にはそう思えない。
神瀬フウリが発信し続けているパスワードの謎を解き明かす必要がある。
「頑張ってるよ……君」
大野は目線を合わさずに呟く。
「中村君達にも、世界の終わりのこと……話したんだよね?」
彼のゆったりとした言葉に緊張が走る。
これは……余計なことを言いやがってっという意味か?
意図がわからないが、嘘を吐いてもしょうがないので俺は頷く。
「ああ、問題でもあったのか?」
「……いいや」
大野は青空広がる窓の外を眺めながら答える。
「いつもと……会話内容が違うだけだった」
「中村と何を話したんだ?」
「……」
大野はそのまま黙ってしまう。
何を考えているのか本当にわからないが、敵意みたいなものも感じないからまあいいか。
俺も紅茶のペットボトルを開けて気まずい時間を過ごしていると彼女が現れた。
「お待たせしたわね」
ニコニコの神瀬が客間に来た。
大野言うとおり戻ってきたことに安堵する。
すぐさま彼女は俺の向かいへ座り椅子をひいた。
「それじゃあ、さっそくだけど聞いて良い? パスワードは?」
ついにこの時が来たか。
まるでその為に来たのがわかっていた言い草だが本当にここまで長かった……
もはや単語の恥ずかしさとか気にする余裕もなく俺は即答する。
「チュチュリナ・チュッチュリーだ」
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