第5話

バンドが大盛り上がりした後、少し待ってから片付けてきた2人と合流した。


は「すっごいカッコよかった!!バンドってかっこいいんだね!」


煇「あははは、やったー!ありがとう。」


つい先程まであんなに意識していたのに、会うなり思わず口から出た言葉にハッとして自分で恥ずかしくなった。

煇が嬉しそうにしていて嬉しかった。


土「あはは、さっきからずっと言ってるよ、はるな。」


椿「ありがとう、来てくれて。去年の3倍くらい人集まってくれたね。」


煇「ねー!椿は全然声かけないけどさ、俺も晴人(ドラム)も頑張ったんだから!」


椿「あはは、ありがとう。」


土「さ、今日はどこ行こうか?」


そう言って土屋はパンフレットを見せてくれた。


は「私何も考えてなかったな〜。」


椿「あ、俺ダンス部観に行きたい。」


煇「ん?珍しいね。」


椿「クラスの人が出るから来てって言われた。」


は「ん?ギャルズ?」


椿「そう。朝話してた子。」


は「へぇ〜、おっけー。」


土「え、その人といい感じなの?」


椿「いや、...まあちょこちょこ話すけどってくらい。でもなんか勇気出して誘ってくれたっぽかったから行こうかなって。」


煇「お〜。」


土「なるほど。」


は「...。」


そう言うことか。

椿のことを好きなのか、あの子は。


初めてこんなことに気がついた。


何でみんな恥ずかしがらずに、こんなに普通に恋愛の話をできるのか不思議だ。


悶々と考えていると話は進んでいて、とりあえず何か食べようと、外に出た。

学校以外の人が結構集まって来ていて、賑やかだった。


煇「何食べる?俺とりあえずたこ焼き食べたい。」


は「いいね!たこ焼きと焼きそばと鯛焼き!そして何よりチョコバナナじゃんけん!!」


椿「食い過ぎだろ。」


土「あははは、それが食べれちゃうんだな〜。」


煇「さすがスポーツ女子。でも俺も全部食べたいから買って分け合おうよ。」


は「良いけど、チョコバナナはじゃんけんしたく無い?」


椿「確かに、俺もじゃんけんはしたい。」


煇「俺も〜!」


土「1人一本だね〜。」


そんな訳で、男女二手に分かれて片っ端から食べ物を集める。


女子で列の長かったたこ焼きに並び、土屋に今日のことを聞かれた。


土「今日は、煇と2人じゃなくて良かったの?」


は「え。」


土屋を見ると、当然知っているけど?と顔に書いてあった。


は「......ね。」


土「あれ?」


は「いやー、分かんないけど、何でみんな恥ずかしく無いの?」


土「ん?恥ずかしい?」


は「いや、こんなにいっぱい人がいるのに2人でいるなんてさ。」


土「好きな人といるところ見られるのが恥ずかしいってこと?」


は「...まあ私が煇を好きなのかは置いといて、そう。何だろ。あの人恋愛してるんだ。って目で見ない?」


土「恋愛してるなら別にいいじゃん。」


は「え。それが恥ずかしい。」


土「何よ、それ。てか、男友達と2人なら平気なのに意識しすぎじゃ無い?」


確かに椿と2人で行動していても何も思ったことがなかったのに急に意識しすぎている気もしてきた....けど。


は「えー。土屋好きな人いたことあるの?」


土「もちろん!楽しいよ、好きな人と少し話せただけで何だか嬉しくなるし、彼氏になったら独り占めできるし!」


は「うーーーーーーーん。それ聞くと私煇は友達な感じする。」


独り占めできて嬉しいとか無いけどな、と思い返す。


土「いやいや、恋愛も色々だよ?煇がはるなのこと好きって嬉しく無い?」


は「それは...まあ、嬉しいけど。」


土「うーん、椿がはるなのこと好きだったら?」


は「え?!いやー、それはちょっと違うでしょ。なんか嫌だな。」


土「.....多分そうなると煇は恋愛感情ありで平気なんだよ。で、椿が恋愛感情あったらダメ。」


は「お〜、なるほど。」


やけに納得してしまった。


は「何で何だろう?でも昨日まで煇のことそんな風に考えたことなかった。」


土「何だろうね〜。私も分かんない。でも、私も好きになってくれたけど無理な人と、この人ならちょっと良いかもって人といたよ?」


は「へぇ〜。土屋は意外と恋愛して来てたんだね。」


土「いや、普通だよ。あなたが興味なさすぎて話題にもこれまで出さなかったけどさ。」


は「あははは、無縁だったもので。」


話しているとたこ焼きの順番が来たので、普通と明太子と2舟買ってふたりの元へ戻った。


は「あ!もう食べてるじゃんずるい!」


椿が一口焼きそばを食べているのを見た。


椿「やべ!あはは、ごめん、俺ら腹減っちゃった。」


土「とりあえず食べるか〜!」


何となく人の少な目の場所へ移動した。

それぞれ箸を持って、私と土屋はたこ焼きを一舟ずつ、椿が焼きそばを持ち、煇は多分まだ誰も食べないだろう鯛焼きを持ってくれて箸でつついた。


ひとまずたこ焼きを一口.....


は「あ゛っっっっっっつい゛な゛ぁ!!!」


熱すぎて野太い低い声が出た。


煇「あはははははは、声低過ぎるって!」


は「いや、びっくりしたー。火傷したかも。ちょっと割って冷まそ。」


煇「あははははははは!」


煇がめちゃめちゃ笑っている、笑いすぎなくらい。


煇「あははははははは......ひーっほっぺた痛い!」


は「そんなに??」


椿「あははは、何かツボってんな。」


それを見て椿が笑った。

ちょっと落ち着いた煇の方を見ると目があって、また笑い出した。


煇「ふっ...ふ、ふははははは!」


は「ち゛ょっと〜、笑゛い゛すぎだよ〜。...あははは」


わざと野太い声を出してみたが、笑ってる姿を見て思わず私も笑った。


何だろう。

煇が笑ってくれると嬉しいかもしれない。


これが恋愛感情なのか???


よく分からなかったけどそうかもしれないと思った。(?)


熱さを冷ましながら食べて、たい焼きは後にして一旦チョコバナナへ。


「へいらっしゃい!!」


チョコバナナの店はガタイの良いじゃんけんマンが4人もいて俄然やる気が出た。


は「この、四天王に挑む感じ、いいね!」


煇「あははは、よし、誰から行く?!」


土「前半先行型の私が1番手で行こう。」


煇「じゃあその後俺!」


椿「俺その次!」


は「私がラスボスね。」


みんなニコニコでお金を払い、横に並んだ。

四天王も腕なんか組んでいてノリノリだ。


「行きます、ジャンケンポン!」


「うわーーー!」


土「やったー!!」


土屋の勝ち。


「ジャンケンポン!」


「ああああああ!」


煇「よっしゃ!」


煇の勝ち。


「ジャンケンポン!」


「えぇーー!」


椿「よし、こんなもんよー!」


椿の勝ち。


「ジャンケンポン!」


「やられたああああ!」


は「よっしゃーーー!」


私の勝ち。


土「あはははは、全勝ち〜!四天王変わる?」


「「「くっそーーーー!覚えてろよ〜?!」」」


あははははは


ノリのいい四天王にみんなで笑う。

1人2本ずつチョコバナナを受け取る。


は「すごーい!みんな勝ったね!もう一回戦したいくらいだ!」


煇「な!でもバナナはもういらないけど。」


椿「ねーねー、バナナいらないけどもう一回戦しない?ジャンケンだけやりたい。」


椿がそう言うと、先程逃げ出した四天王がまた前に出て来て腕を組んだ。


「挑戦者がいる限り、迎えようではないか!」


は「あはははは!ジャンケンなら自分らでやれってね、でもやりたい!」


土「本当だよね。えー、これでまた全勝したら奢ってくださ〜い!」


「あははは、じゃあ、全員勝てば全員分追加で奢りましょう。」


煇「いや、バナナはもういらないって。」


椿「まあまあ、とりあえず戦いとなればこちらも負けてられませんね。」


は「ふはははは、挑戦者がどちらなのか分からせてやろうじゃないの!」


土「どいつもこいつも厨二病だな〜。」


そんな会話をして、また並んでお互いに腕を組んで睨み合う。


「それでは行きます、ジャンケンポン!」


「うわーーー!」


土「やったー!!」


土屋の勝ち。


「ジャンケンポン!」


「ああああああ!」


煇「よっしゃ!」


煇の勝ち!


「ジャンケンポン!」


「えぇーー!」


椿「よし!」


椿の勝ち!!

そして最後...


「ジャンケンポン!」


「やられたああああ!」


は「よっしゃーーー!」


私の勝ち!!!


椿「あはははは!四天王代われ!」


「「「「うわあああああ!!」」」」


あははははは


四天王はみんな後ろに倒れ込んで笑った。


「じゃ、バナナ4つ追加で。」


は「いらんいらん!四天王代わりな!」


「それだけはご勘弁を〜!」


煇「あはははは」


何だか四天王と仲良くなって一緒に写真なんかを撮って退散した。

途中で部活のみんなに会ったので、私たちはジャンケンのためにお金を払ったからと言ってバナナを半分あげた。


そして、中庭に移動してダンス部を見に行った。


ダンス部は派手な人たちが多く人気で

ものすごい人の量で校舎からもすごい人が見ていて中庭も人が多かった。


椿「すんげーな。」


煇「ね、すごい人。俺らもこんだけ集められたらな〜。」


2人も驚いていた。

4人でちょっとした段差に立って見た。


〜〜〜♪


爆音で音楽が鳴り始めて、1年生から順番に踊り始めた。

手拍子したり、名前を叫んでいたりと大盛り上がり。


2年生になり、うちのクラスのギャル2人が出ていた。

普段は可愛い雰囲気の人が踊っているととてもカッコよかった。


文化祭って食べ物ばっかりじゃなくてこーゆーのを楽しむんだな。


チラッと椿を見たら音楽にノリノリだった。


どのダンスも大盛り上がりで圧倒され、あっという間に終わってしまった。


すごかったと話していると、近くを通ったギャル2人に椿が声をかけていた。


椿「咲〜!」


咲「あ!椿!観に来てくれたのね、ありがとう!」


とても嬉しそうに椿に駆け寄っていて可愛かった。


椿「楽しかったよ、来て良かった!すごい人だね。」


咲「まあ、3学年一気にやるからね。はるな達もありがとう!」


は「カッコよかったー!」


咲「あはは、ありがとう。てか、ごめん、来てもらったのに今朝のバンド行けなくて。」


椿「いやいや。俺、明日も先輩とバンドやるから気が向いたら来て。」


咲「ふふ、行きます!楽しみにしてる。」


ちょっと照れて笑っている咲ちゃん。

...この人やっぱり椿のこと好きなんだな〜、と思ったりなんかした。


来てくれって誘うの、勇気出したんだろうな〜。


今なら分かる。

...煇もすごく勇気出して言ってくれたのかも、と。


何だか悪いことしたな〜。

嫌なわけじゃないからみんなで。って、中途半端だったかな?


うーーーーん...。


煇「あ、俺そろそろ行かなきゃ。」


土「あ、戻る時間?じゃあ私もだ。はるな達は?」


椿「俺らもそろそろか〜。あれ?土屋のところは何やってんの?」


土「うち、バームクーヘン。売ってるやつ出してるだけ。」


椿「え、そんなパターンあるんだ。」


は「私たち早いけど一旦戻る?」


椿「そうするか。」


みんなで教室に戻って行った。

土屋は階が違うのですぐ別れた。


煇と並んで歩く。


煇「今日、帰り人多いかもだけど平気?やめておく?」


言われて気がついたけど、確かに部活がないのでそのまま帰るとみんなと同じ時間になってしまう。


は「確かに。」


考えながら立ち止まってしまった、煇も立ち止まる。

椿がそれに気がついて振り向く。


椿「...俺、先戻ってんね。」


は「あ、うん。」


煇の方に向き直す、いつも通り穏やかな表情、大きな目で私を見ていた。


...私が恥ずかしいと言っていたからそう言ってくれたのかもしれない、優しい。


嫌なわけじゃ無い、でも恥ずかしい。

人にあんまり見られないなら、一緒に帰りたいな。


は「...今日、早く帰りたい?ちょっと人減ってから帰るとかは?」


煇「え、全然平気。」


は「じゃあそうしよう。」


煇「...本当に嫌なわけじゃないんだね。良かった。」


何だかホッとしたようだった。

また教室に向かって歩き出した。


断ってしまったから、気を遣わせていたらしい。


明日は2人で回ろうと言ってみようかな。


不意にそんなことを考えてドキドキして来たけど勢いのまま誘おうと思った。


は「あのさ、煇?」


煇「ん?」


「あ、煇ー!交代して〜!」


ちょっと離れたところから大きな声で煇が呼ばれていた。

タイミング悪。


煇「分かった〜!ちょっと待って!」


は「...。」


煇「どうしたの?」


は「あ、ごめん。帰りで大丈夫。」


煇「そう?じゃ、また後で。」


手を振って別れた。


は「はぁ。」


一日中考えすぎか。


ドキドキを抑えながらちょっと遠回りして教室に帰った。


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