時鳥恋歌

chisyaruma

第1話 時鳥恋歌

卯の花の 匂ふ垣根に 響む声  時鳥とは 知らじ 恋とは


あしひきの 山より来鳴く 時鳥  恋しき人の もとへ誘へ


ぬばたまの 夜の五月雨に 濡れそぼち  独り鳴くらむ  わが身のために


我が宿を  過ぎていずこへ 鳴き渡る 君が面影 追ふか時鳥


いつ来むと  問へど答へぬ 時鳥  待てとぞ匂ふ  橘の花


語らひて  寄り添ふ窓に 忍び音の  間近に聞こゆ  時鳥かな


東雲の  空に消えゆく 声聞けば  また逢ふまでの  遠さ悲しも


ほととぎす  昔の人の 声に似て  涙誘ふよ  うつせみの恋


鳴き渡る  声に幾度 かへりみむ  来ぬと知りても  待つ心かな


鳴き尽くし 夏逝く鳥よ 時鳥 また来る年は  穏やかに聞かむ

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