32 魔族との再戦

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 奴はレザレを口封じのために殺し、俺をも始末しに来たようだ。


 魔族が来たということは、やはりレザレの背後にいるのはルーファス帝国と見てよさそうだった。


 そして帝国と魔族のつながりを知られないために、目撃者を始末して回っているわけか……。


「前回は不覚を取ったが……今回は、そうはいかんぞ」


 オルバレオの手に黒いオーラが湧き上がる。


 しゅうううう……んっ。


 そのオーラは一本の長剣の形になって収束した。


「かつて魔界の大戦において、俺はその戦功によって魔王シャルムロドムス様からこの【魔剣】を授かった――」


 漆黒の剣を構えるオルバレオ。


「まさか人間相手に使うことになるとは思っていなかったが……この間の不覚を晴らすため、俺はこの剣を使う」

「魔剣……」


 俺は思わずつぶやいた。


 古の文献でしか読んだことがない、伝説の武器だ。


 未来の世界で魔族の軍勢がそれを使ったという記録はない。


 もしかしたら――本来の歴史での奴らは全力ではなかったんだろうか?


 オルバレオの口ぶりから察するに、『人間相手に全力を出すのは誇りが傷つく』といった理由で。


 だが、今――オルバレオはその誇りを捨て、全力で向かってこようとしている。


 未来にはなかった脅威が、目の前にあるんだ。


 俺は気を引き締め、身構えた。


「この剣を使うのはお前への最大限の評価だ。光栄に思え」


 オルバレオの表情が、怒りと憎しみに染まっていく。


 この間の敗北がよほど屈辱を与えたらしい。


「そして――死ね!」


 叫ぶのと同時に、突進してくるオルバレオ。


 翼をはばたかせて推進力を倍加し、すさまじい速度で突っこんでくる。


「速いな」


 つぶやきつつも、俺は【竜翼】の紋章による【超反応】でその動きを見切る。


 繰り出された一撃を、俺は剣を跳ね上げて受けた。


 ぎいぃぃん!


 刃と刃がぶつかり、けたたましい金属音が響いた。


「ぐっ……!」


 突進力が加わった斬撃は、すさまじい剣圧だ。


「だったら――」


【竜牙】の紋章を全開にし、パワーを増大させて押し返す。


「――ふん」


 オルバレオは体勢を立て直した。


「その力と速度、そして反応……人間のレベルを明らかに超えている。お前は何者だ?」

「ただの王国騎士さ」


 俺は剣を構えなおした。


 そして、予備動作なしでいきなり魔力弾を撃ち出す。


「ちいっ……」


 オルバレオも魔力弾を生み出し、それを相殺した。


「人間を超えた身体能力に魔力まで……お前は、人間というより竜に近いようだな」


 と、俺を見据えるオルバレオ。


「……そうだ、思い出したぞ。その紋章はエンシェントドラゴンに由来するものか? 以前、魔界の大戦で見た覚えがある」

「……さあな」


 こいつは古竜の紋章のことを知っているんだろうか。


 俺は警戒心を強めた。


「古竜とは魔王様に匹敵する力を持つとされる数少ない種……超古代文明によって生み出された最強の存在の一つだ」


 オルバレオが俺をにらむ。


「ならば、こちらもそれ相応の力を使わざるを得まい――【魔剣起動】」


 ヴヴヴヴヴヴヴッ!


 奴が持つ魔剣が鳴動を始めた。


 羽虫が飛ぶような音を立て、剣全体が振動し、そして――。


「くおおおおおおおっ……!」


 魔剣から噴き出した黒いオーラがオルバレオの全身を包みこんだ。


 同時に光が弾ける。


「……ふうっ」


 光が晴れると、先ほどより一回り体が大きくなった魔族の姿があった。


「魔剣の力を俺自身に取り込んだ……もはや今までの俺とは思うなよ」


 ニヤリと笑うオルバレオ。


 どんっ!


 次の瞬間、奴は地を蹴り、突進した。


「っ!? う、動きが見え――」


 俺の【超反応】をもってすら、奴の動きを捉えきれない!


 ざしゅっ……!


 繰り出された斬撃が、俺の胸元を深々と切り裂いた――。







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