はやく死んで。

白兎白

第1話 わたしのこと

お母さん、大好き。

本当に大好き。

私はあなたの子どもでとても幸せだよ。

だから、お願い。










はやく死んで。










私は幼いときから引っ込み思案な性格だった。

それに人見知りだった。

年末年始の親戚の集まりは、地獄だった。

私はいつも、お母さんのロングスカートの裾を握りしめ、お母さんの後ろから親戚を見ていた。

お母さんもその時には私が人見知りなのを察知して「ごめんなさい、この子人見知り激しくて」といって、助け船を出してくれた。


お父さんは寡黙な人だったけど、私には優しく接してくれた。

でも、お父さんとの記憶は、あまりない。

なぜなら、お父さんは私が5歳の時に交通事故で亡くなった。


お母さんはどん底だった。

でも、それを助けられたのは私かもしれない。

私が名前の通り《ひかり》になれた気がした。


「ひかりがいるから、お母さん頑張るね」


痩せてちょっと小さくなったお母さんが泣きながら私に言った。

そう、その時は私も頑張ろうと思った。

お父さんがいない生活は、大変だった。

私はいつも、心のどこかに寂しい気持ちがあった。

でも、それを悟られないように、頑張って過ごした。


その2年後、お母さんはお義父さんと再婚した。

最初こそ戸惑いはした。

でも、お義父さんもいい人で、私をたくさん可愛がってくれた。

その3年後、私はお姉ちゃんになった。

10歳の時だった。

産まれたのは、弟の《そら》。

姉になったのは、喜ばしかった。

でも、私の寂しさは加速してしまった。


そらは、先天性の心臓疾患があった。

産まれてから、チューブに繋がれ、手術が必要だった。

お母さんもお義父さんも、そらにばかり気持ちを注ぐようになった。

私のことはどうでもいいんだと、当時は思っていた。

でも、お義父さんが

「ひかりとそらとお母さんと僕、4人であの家に戻ってまた暮らそうね」

そう言われて、涙が止まらなかった。

あぁ、お義父さんは私の事も心配してくれてたんだ、と。

そこから、《そらの病気がよくなりますように》と、お守りを作ったりした。

2人を取られて、不愉快な気持ちもあったが、お義父さんの気持ちを聞いて、気持ちが変わった。


その後、そらの病状も落ち着き、4人でお家で過ごせるようになった。


私は高校卒業して、今は美容師になるべく、専門学校へ通っている。

地元から離れて、一人暮らしだ。


今までお母さんがやってくれていたことも自分でしなければいけない。

掃除洗濯料理などなど。

今までのお母さんのありがたみがひしひしと感じる。

そして、偉大な存在だと、改めて思った。


だから、尚更はやく死んでほしい。

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