経過観察 3日目


次の日、窓から漏れる陽の光で私はゆっくりと目を覚ました。軽く伸びをして息を吐いたあと身支度を整え焔がいる部屋へと向かった。


「ハルカ随分疲れている顔だな」


「……これくらい平気。それより今日なんだけど……」


私はそう告げたあと今日の予定を伝えた。今日は研究所に行っての検査。1日がかりの大きな研究になりそうだ。


「……ハルカも来るのか。」


「貴方の責任者は私よ。私が行かなくてどうするの」


「……ふむ。それもそうか。」


その言葉に私はため息を吐き研究所へと向かう準備を終わらせれば転移術を使って焔と共に研究所へと向かった。


研究所の中へ転移をすれば軽く伸びをしたあと近くにいた部下に焔を預け私は今持っている経過観察の資料と血液のサンプルを渡してから今回行う検査項目を見つめた。


「血液に妖力……あとは身体能力?」


「はい。血液の方は飛ばしても構わないかと……星宮さんのおかげでサンプルもありますし」


「そう……今日は1日ここに居るから何かあれば言って。あとは……」


私が話を続けていると妖力が高数値を出した時に鳴る警告音が研究所に鳴り響き私は肩を揺らした。慌てて警告音が聞こえた方へと走れば少しひび割れている地面と慌てる部下、そして欠伸をしている焔がいた。私は警報音を止めて部下に話しかけた。


「これは……何があったの」


「星宮さん……!この妖危険すぎます!妖力の計測をしようとしたら……」


部下から話を聞けば私はため息を吐いた。なんでも鬼の妖力を甘く見ていたらしい。これは部下に非がありすぎる。私は焔に視線を向ければ特に気にしていなさそうな表情に安心し部下を下がらせた。


「焔。体調に変化は?」


「特にない。しいて言うならあの音は煩かった。」


「あぁ……あの警報音は仕方ないの。貴方の強すぎた妖力に反応したの」


「ふむ……ハルカ。この検査はまだ続くのか」


「えっと……検査項目はまだ残っているけれど……」


「……ここにはもう居たくはない。あいつらの視線も不愉快だ。」


その言葉を聞いて私は軽く周りを見渡した。周りは焔を恐れているかのような視線を向けていた。私は小さく息を吐き軽く頷いた。


「分かったわ。本当はまだ検査はあったけれど私の屋敷で続けましょう。」


私はそう告げて部下に片付けを頼めば焔と共に私の屋敷へと帰った。



「お疲れ様焔。とりあえず今は休んでまた後日残りの検査をするわ。何か必要なものがあれば用意させるから」


「……分かった。」


焔は小さく頷きそう告げればゴロンと寝転びそのまま寝息を立て始めた。その寝顔はまるでただの人のように見え私は首を横に振り小さく息を吐いた。


「……まだまだ調べることは沢山ある。焔が寝てる間に進めないと。」

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恋愛研究日誌 綴音華柏(つづねこはく) @kohaku_1105

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