第2話 黒魔術師の影―

 俺とリュミナは、壊れた街を一つずつ修復しながら進んでいた。

 だが、どうにも妙な違和感があった。


「……ブロックの欠損が自然発生じゃない。誰かが意図的に壊している」

「誰かが……? じゃあ、バグはただの結果?」


 そのとき、空気が凍りついた。

 漆黒のローブを纏った影が、瓦礫の上に現れた。


「ようこそ、《ブロッカー》。そして歓迎しよう、私の実験場へ」


 声は低く、しかし甘美に響く。

 その男の手に握られていたのは――黒曜石でできた杖。


「名を《ザラトゥス》……この世界を“再設計”する黒魔術師だ」


 杖を振ると、崩れたブロックの破片が宙に浮き、異様な形に組み換えられていく。

 それは街の一部ではなく、黒い怪物の姿だった。


「こいつ……バグを操ってるのか!?」

「違うわ、レイジ! あれは“黒魔術”よ!」


 リュミナの叫びに俺は息を呑む。

 ――黒魔術。それは、ブロックの構造を書き換え、世界そのものを呪いに変える禁忌の力。


「君のブロック崩しの力がどれほど通用するか、試させてもらおうか」


 黒い怪物が唸り声をあげて迫る。

 俺は咄嗟にゲーム盤を展開し、光のボールを放つ。

 しかし、怪物は壊れたブロックを吸収し、再び姿を組み直した。


「再生……!? これじゃキリがない!」

「黒魔術の力は、破壊すらも糧にするのよ!」


 絶望の渦に飲まれかけたその瞬間、リュミナが俺の手を握った。


「信じて、レイジ。ブロックの力は“遊び”じゃない。

 あなたの意思次第で、黒魔術すら打ち砕けるはず!」


 彼女の声に背中を押され、俺は深呼吸する。

 ――逃げない。壊されるなら、繋ぎ直す。

 そうだ、俺のゲームはただ崩すだけじゃない。

 “修復する”ことだってできるはずだ。


「行くぞ……黒魔術師! お前の歪んだブロックを、俺が組み替えてやる!」



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