わたしはポポポ

がま

第1話

 わたしはポポポ。フクロウだ。可愛い可愛いフクロウだ。そして人間と一緒に暮らしている。人間は毎日わたしのことを「大好きだよ」って優しく撫でてくる。そしてわたしは毎日人間の頭の羽繕いをしてあげている。今のところ、特に大きな不満もなく暮らしている。

 人間は決まった時間に家を出て、だいたい同じ時間に帰ってくる。家にはわたしの部屋があって、そこでは自由だ。日向ぼっこしたりボールで遊んだり、止まり木で寝たりしてのんびり過ごしている。

 わたしはわたしが可愛いことを知っているので、日々可愛い仕草や動きをしてみている。そうすると決まって人間がケータイのカメラで撮り始める。「ポポポは宇宙一可愛いねぇ」って嬉しそうに笑う。どうやらわたしは人間を嬉しくするのが得意のようだ。人間は毎日ごはんをくれるので、かわりにわたしは人間を嬉しくしてあげるのだ。お互いに得があるのだから、とてもいいことだと思う。そう、特に不満はない。けれど、しいて言うなら外で思いっきり飛んでみたいと思うことはある――


 人間が散歩に誘ってくる。どうやらいつもと違うところに行くらしい。車でちょっとだけ遠出をしようって言っている。

 わたしは人間の隣の席に置かれた止まり木に止まって窓から見える景色を眺める。いったいどこへ行くんだろう。しばらく車に乗っているけれど、なんだか木や草が多くなってきた。

 「ポポポー! 着いたよ!」

 人間はわたしについてる紐をグローブにつなげてその上にわたしを誘う。しかたがないから誘いにのってあげる。

 どうやらどこかの山に来たらしい。風で草や葉っぱが揺れたり動物が話してたり、いろんな音がしてとてもにぎやかだ。

 「あれー? キミ知ってるぞ! こんなとこで会うなんて奇遇だな!」

 声のする方を見ると、家の近くでよく見かけるカラスがなぜかいた。

 「え? ここ家から結構離れてるけど、あなたこんなところまで来るの?」

 「ん? あー! うん、ボクね、旅好きなんだ! だから他の仲間たちとちがってこのくらいの距離ならしょっちゅう飛んでるんだよ!」

 「そうなんだ……。今まで話したこともないのに、こんな場所でよく気づいたね。」

 「だってキミ、目立つし! キミみたいな子、あんまりみかけないから近所のあの子かなって! うん、やっぱりアタリだったね!」

 人間には言葉がわからないから不思議そうにわたしとカラスを見ている。

 「人間がすごくみてる! なんか食べ物置いてってくれないかな!」

 「食べ物は持ってきてないから置いてってくれないと思うよ。」

 「えーそうか、ざんねん。ま、いいけど! そう言えば、ここのお山、キミと見た目はちょっとちがうけど、フクロウがいるんだよ! 会ったかい?」

 「そうなの? 全然見かけなかったよ。」

 「そっかぁ。じゃあ、またここに来ることがあったら次は会えるといいね! 森のフクロウたち、なかなかおもしろいよ!」

 「え、『フクロウたち』ってことは、いっぱいいるの?」

 「うーん、どうだろう? いっぱいかって聞かれるとそんなにいるわけじゃないと思うけど。ボクも全員を知ってるわけじゃないしわからないな。」

 (そりゃそうか。)

 「ボクはね、いろんな動物とおしゃべりしたい時はここのお山に来るんだ。ここの動物たちはなんでかわからないけど、おしゃべり好きが多いから盛り上がるんだよね。今日はもう散々おしゃべりしてきたから、のどカラカラだよ。そうだそうだ、いい水飲み場を知ってるんだけど、キミも一緒に来るかい?」

 このカラスは旅だけじゃなくておしゃべりも好きらしい。

 「いろいろ詳しいんだね。一緒に行ってみたいけど、紐があるから行けない。」

 「そっか、そうだね。ざんねんだな!」

 (あまり残念そうには見えないけど。)

 「じゃあ、紐がついてない時に教えてあげるよ!」

 「え? あ、うん。」

 「あ、そうだ! キミの名前はなに? ボクはタロチャンって言うんだ! 人間のじじいが毎日タロチャンって話しかけてくるからタロチャンなんだ!」

 「へぇー。タロチャン、わたしはポポポ。」

 「ポポポ! 覚えたよ! 少しだけどポポポとお話できて楽しかった! ボクそろそろ帰るから、また今度お話しよう!」

 「あ、ねぇ、じゃあ、今度旅の話をもっときかせて。すごく興味あるの。」

 「旅に興味あるの? いいよ、次会った時きかせてあげる。じゃあ、またね!」

 そう行ってタロチャンは羽ばたいた。自由に空を飛ぶのってどういう感じなんだろう。だんだん遠くなるタロチャンを見て、いいなぁって思った。

 「ポポポ、もうちょっと散歩したら帰ろっか! あ、ねぇ、さっきカラスと何か話してたの? もしかしてあのカラス、タロチャンだったりして! あのね、近くに一羽だけ人懐っこいカラスがいて、近所のおじいちゃんがタロチャンって呼んでるんだよね。カラスの違いはわからないけど、なんとなくタロチャンっぽい気がしたんだよねー……まぁでもカラスってあんまり遠出するイメージないし違うか!」

 (タロチャンって有名なのね……)

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わたしはポポポ がま @popogama

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