魔法道具　炭酸水ぱちぱち丸

　私は魔法道具ショップの店員よ。

　だけど、裏路地の目立たないところにあるせいで、毎日お客さんのいない寂しい日々を送っているわ。

　このままじゃ店が傾いちゃう！

　ライバルの同年代の子達はみんな表通りに店を構えて、ばんばん売っているっていうのに！

　売れない寂れた魔法道具ショップのままだと、いつか店が潰れちゃうかもしれないわ。

　そうならないために、オリジナルの魔法道具を開発することにしたの。

　今必要なのは、話題性よね！

　立地の悪さを吹きとばすような、皆が注目する魔法道具を思いついてみせるわ！

　なんて意気込んだのはいいけれど、なかなかうまくいかないわ。

　花火ぱちぱち丸とか。パンチングマシーンぱちぱち太郎とか。

　自動で拍手褒めてくれる君とか。

　作ってみたけど、なかなか売れないわ。

　当然よね。

　思いついてすぐできるなら、とっくに世の中は発明品だらけ。

　天才だらけになっちゃうもの。

　はぁー。

　なんてため息をついていた私は、大好きな炭酸水を買いに出かける事にしたわ。

　口の中でぱちぱち弾けるのがいいのよね。

　今は季節まっさかりの夏だから、さっぱりしたレモンジュースと合わせるのがいいわ。

　お店？

　どうせ、お客さんなんてこないわよ。

　もういいわよ。いいわよ。

　一日くらいさびったって。誰も来ないんだから。

　ちょっと閉店中って看板だしとくわ。

　うーん。

　まさか、お店をさぼった罰があったったのかしら。

　いつもはまだ残ってるはずの炭酸水が売り切れてるなんて。

　お店の冷蔵庫にある、レモンジュースと一緒にのもうと思ってたのに。

　もう、踏んだり蹴ったりだわ！

　なんて思っていたら、目の前を大きな袋をもった男の人が。

　すごく大きいけど、一体何が入ってるのかしら。

　って、炭酸水じゃない。

　まさか、買い占め！

　ちょっと、あんたが買い占めたせいで、他のお客さんが（特に私が）買えなくなっちゃったじゃないの！

　ちょっとは他の人のことも考えなさいよ！

　え？

　ルールには違反してない？

　買い占めちゃいけない法律なんてない？

　それはそうかもしれないけど、人として守るべきものってあるじゃないの。

　あっ、ちょっと、こらー。

　まちなさいよー！

　あーっ、もうあったまきちゃう！

　こうなったら、この苛々を魔法道具の開発にぶつけてやるんだから！

　見てなさいよー！

　映像結晶の前にいる良い子のみなさん！

　こちらは今話題の魔法道具店です。

　新しく開発された魔法道具が売られているところを、さっそく見に行きましょう。

　これが、果物を入れると自動で炭酸水になるという魔法のコップです。

　炭酸水がぱちぱち弾けてるのが、見えますか！

　あ、店主さんこちらの魔法道具どういったお名前なんでしょう！

　え？

　さっき取材で聞いたでしょうって。

　お約束ですよ、こういうのは。

　知らないふりして、喋ってください。

　ふむふむ。

　いつでも炭酸水ぱちぱち丸？

　……この魔法道具展が売れないのって、いえ何でもありません。

　現場からは以上です。

　皆さん興味がある方はぜひ足を運んでみてくださいね！