社畜OL、魔王城を買う。~異世界の魔王城を買ったわたしはスライムを増やしながら女装メイド男子の四天王にひたすら尽くされる~

神田 るふ

プロローグ とある社畜のモノローグ

 わたしは社畜である。


 名前は、無い。


 社畜に、名前など必要ないのだ。


 企業も社会も、社畜に名前など求めない。


 社畜であるが故に、わたしの疲れ切った心身は既に汚泥と化している。 


 疲れていたんだろう。


 疲れていたに違いない。


 でなければ、狂っていたとしか、言い様がない。


 泥のような頭で、とんでもない決断を、してしまった。


 人生において、決断を下す瞬間はいくらでもある。


 意図しようが意図しまいが、その決断が人生を決めてしまうこともある。


 腐りきった会社を選んだのも、泥沼のような社会で生きていくことを決めたのも、全て、わたしの決断だ。


 そして、わたしが、この魔王城を買ってしまったことも。


 午前中は朝から営業周り、午後は日付が変わる寸前まで事務仕事、ストレス発散はバッティングセンターという限界社畜OLだったわたしは、今、魔王城で暮らしている。


 午前中は魔王城周辺をてくてく歩き回り、午後はサインを書く仕事とハンコを押す作業をバリバリこなし、夜はスライムをぽこぽこ叩くという魔王の仕事を……。


 あれ?


 やることは、あんまり変わってないような?


 でも、変わったこともある。


 わたしのことを全力で愛してくれる、可愛い部下ができた。


 想いを寄せることができる、すばらしい先輩ができた。


 わたしの傍を片時も離れない、頼れる仲間ができた。


 わたしは社畜であった。


 だが、今は、魔王城の主だ。


 わたしは、魔王である。


 名前は、無い。


 魔王に、名前は必要ない。


 運命も偶然も、魔王に名前など求めない。


 ただ、魔王という存在があるだけだ。

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