#9 ちょー強いんだから
「あは!
不抜けばっかりだとおもってたけどぉ……かわいいしいいね!」
「誰ですか?」
未だ怒りが冷めやまぬ天菜が問う。
自らよりも倍以上のある男を一瞬にして地面に伏せさせる彼女の実力は、その場の全員を黙らせるに至る。
天菜を除いて。
「名乗る時はそっちから名乗らないと。まあいいけどね!あたしはレイ!!きみはー?」
「……天菜、です」
「アマナ!かわいい!」
そう話すのを黙って聞くアリーナの人物。
観客までもが静まりかえる中、会場に声が響く。
「あー、あー。仲良しごっこしてんじゃねえぞ。ここは幼稚園じゃねえんだ。戦え」
と。
それを聞いたレイが心底面倒くさそうに言った。
「……これでい?」
そういったレイの後ろにいたほかのアリーナの選手が数名、先程の男と同じように倒れ込んでいた。
それと同じく風結達のクラスのメンバーも倒れていた。
クラスメンバーで残っているのは風結を含め9人。
「おう。規定人数以下になったからいいぜ。じゃあこの後午後1時15分から、トーナメントを開始する。それぞれの待機所に行くように」
レイによって一瞬に倒れ込んだ人数のおかげか、規定人数である20人に到達したようだ。
「は……?何したの!?」
「ん?あー、まあアマナは可愛いから教えてあげよっか?」
「……可愛いとか今どうでもいいでしょ」
「もー、怒んないでよ!怒ってんのも可愛いけど。
ってそんなことはいいんだっけ?さっきのいきなり倒れたのはね、あたしの毒!ちょー強いんだから。触れたら1時間は動けないよ!
それを塗った小さな針を
「……死ぬの?それ」
「この大会は殺害ダメだからしなないよ!安心して?」
「分かった。……じゃあ待機所まで行くから」
「はーい!また後でね!」
そう言ってアリーナから続く道を別に進む天菜とレイ。
天菜の後ろを残ったクラスのメンバーが着いていく。
「……天菜、私のために怒ってくれてありがと……」
少し不安そうに天菜に駆け寄る葉月。
「ん、大丈夫だよ。ごめんねらしくないところ見せて」
「んーん!超かっこいいよ!」
「もー、照れるじゃん」
普段通りの顔に戻る天菜。
それを見た葉月も安心していつものテンションへと戻る。
石造りの待機所に到着すると、トーナメント表が貼られていた。
「……名前だけじゃどんなのかわかんねえな」
「当たり前だろそれは」
「……ていうかこの服……いやジップパーカーか。いつの間に……」
風結と裕也が言った。
黒い無地のジップパーカーをそれぞれのメンバーが羽織っていた。
頭を覆うようにフードを被った状態で制服の上から。
「あれじゃない?半魔族化がなんとか……みたいなやつ」
「あー!なるほど。魔族みたいな見た目だからだっけ」
なんて話しているとアナウンスが流れる。
スピーカーらしきものは見当たらない上、城にあった水晶もないのに。
「あーあー、一試合目に出るヤツ、2人。早くアリーナに集まるように。それ以外のメンバーはアリーナと反対側の階段をのぼると観客席の上に出る。そこから観戦できるから自由にしておいてくれ」
と。先程の気だるそうな男の声がした。
トーナメントの1試合目、書かれている人物の名は清海裕也。相手はテスラという名の人物だった。
「裕也……」
「あー?んでお前がビビんだよ。結。任せろ、カマしてくるぜ」
「……うん。気をつけてね!」
おう、と笑顔で返事をした裕也がアリーナの方へと歩く。
それを見届ける結達一行。
「恋する乙女はつらいね?」
「……もう!!うるさい!」
「ふふふ」
風呂での仕返しだろうか。同じ言葉を結に返す天菜。
そんな2人の後ろで一足先に階段を駆け上る風結が居た。
少し長い螺旋階段を登った風結は、眩しい日差しを手で遮り、上からアリーナを見下ろす。
(……この世界に来て初めての人同士の戦闘。それを外から見れるのは僥倖。裕也の固有魔法は1度しか見てないけど充分強いと思うんだよな……。実際あの魔法でどれほど通用するのか見せてもらうか。
……なんかごめん裕也)
そんな考えを張り巡らせている風結の後ろから続々と天菜達が来る。
高いとはしゃぐ人もいたが、それと同時に皆、裕也の心配をしていた。
「んーー、さてと。アンタがテスラ?」
「えぇ。
「悪いけど、かませ犬になるつもりは無いぜ?」
「そう言ってられるのも今のうちですよ?」
大きなゴングが鳴り響く。
「試合開始!!!」の声と共に。
「っしゃやるぜ!!
「ほっほっほ、
裕也の魔法は不発。
テスラの放った魔法の影響か、裕也の頭上に大きな雷雲が発生する。
その場全員が想像した通り、裕也に向かって雷が落ちた。
轟音と共に。
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