大防衛
「こんなことなら、
「全くだ。いつまで戦が続くかわからん。矢を切らせては、応戦もできんからのう」
「さあ、急ぎ万本の矢を拵えようぞ」
東門へ寄せた黄巾が放つ矢も西門付近までは届かない。西側に身を寄せた女たちは、ありったけの食材を持ち寄っている。普段にも増して、機敏に料理の支度を始めた。
「腹が減ってしまっては、戦ができないからね」
「若い者には、随分と活躍してもらわんと」
「腹持ちの良いものを作り続けようかねえ」
黄巾の残党に襲撃されてもなお、
「ありったけの矢を射ち込め! ぼやぼやしてないで城壁を登れ!」
剣を掲げた八字髭の
「騎馬は丸太を城門にぶち当てろ! 中には財宝があるに違えねえ。早いもの勝ちだぞ!」
無数の矢が塢に射込まれる中、黄巾賊の兵たちが次々と
騎馬隊は、運んできた丸太を二頭の馬で引くように縄を
塢からも矢を射返していた。
「
東の
既に関城には、
東門に近い護城墻の内側には、許定と許褚の兄弟が五百ほどの若人を従え待機している。
「薛麗! 張鴦! 合図が出たぞ!」
東南の角楼、その前方に関城がある。盛んに矢を放ちながら、東南の
「わかってるわよ! みんな、やるよ!」
勇んだ薛麗が黒髪を
中でも、薛麗が放つ矢は必中だった。弓に矢を
「行け、張鴦! 突撃して追い払ってこい!」
薛麗の合図で、関城からは三百を率いた張鴦が飛び出す
「……怖え。……怖えよ。……躰が震えて、思うように動かねえ。俺たちは兵士でもねえんだぜ。それをいきなり戦だなんて……。できる訳ねえだろ……」
槍は手にしているが、恐れを成した張鴦が好機を逃そうとしている。張鴦が抱いた恐怖は、
薛麗は関城の内側を
「チッ」
舌打ちした薛麗は、震え上がった若人に声を荒らげた。
「何を臆病風に吹かれてやがる、張鴦! さっさと敵を蹴散らしてこい!」
「……怖えもんは怖えんだよ。震えが止まらねえんだよ」
ドオオオン――。
どれも得物を手にしている。轟音と共に東門近くにある護城墻の
その先陣を切って黄巾の群れに身を躍らせたのは、
まるで嵐だった。許褚に近づく黄巾兵は、
「褚よ、門前の敵を払い
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