浮いた死相
その夜のことだった。
寝床に入った
兜を目深に被り、先頭に立った勇壮な将のような男が
すると、
「
そう言うと、黒鎧の将と兵たちは、すうっと消えてしまった。
目覚めた許褚は、いつものように
誰かに頼まれている訳ではなかった。祠の管理は、許褚が自ら始めたものだった。何を
許褚は入念に祠の周りまで清掃すると、畑へと向かった。二頭の牛に
「もう少し畑を広げよう。冬小麦の収穫を増やしたい」
畑に出てきた
「ん」
許褚は額の汗を拭うと、二頭の牛の手綱を引いた。元緒の方に近づくようだった。
「許褚と言うたな。祠の清掃もそうじゃが、よく稼ぐわい。
許褚は、それを気にも留めず農耕に没頭した。
代わって、
不思議そうにした許林杏が、元緒と許定を交互に見比べている。藜の杖の先端に赤い
「元緒さま、褚が惜しいとは、どういうことでしょうか?
「
「別の相……?」
許定は、眉間に
「許褚は、
「もうすぐ、二十七になりますが……」
残念そうに首を左右に振ると、元緒は許褚に聞こえぬよう声を低くして続けた。
「浮いておるのは死相じゃ。惜しいかな許褚は、二十七の歳に世を去るであろう」
「――――⁉」
許定は、目を
大きく
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