復興の兆し
その祠を中心に、
夜露を凌ぎ、狩りで獲物を追いながら、三人の子と邑の再建に
「たかが四人で邑を再建するなど正気か?
みすぼらしい風体をしている。荷車に詰まれた資材を下ろしていた
「
許定は、白髪交じりの張平に笑みを向けた。黄巾の災厄から逃れるように、近隣の山中に隠れていた邑の住人だった。
「おお、生きておったか、張平。お前も手伝え。戦に負けない邑を築く」
年端の近い張平の無事に安堵の色を浮かせた許淵は、材木を肩に担いで続けた。
「お前も手を貸せ、
「あん?」
張平の遥か後方から作業を眺めていた若者に、許淵は声を張り上げた。
「何で俺が手伝わなきゃならねえ? どうせまた賊に襲われるのが落ちだろ」
鋭い目つきで
「――――⁉」
突如、張鴦は目を
見れば、巨漢の
「哀れだな。弱い奴ほど文句が多い」
「ああん⁉」
ぼそりと言った許褚に、張鴦はいきり立つと鼻息を荒くした。
「黙れ許褚! 誰が弱いって? やってやんよ!」
張鴦は
「いっそ黄巾に身を投じた方が楽なんじゃないか?」
木材を肩に担いで運ぶ許淵の前に現れたのは、
その後ろには、長い黒髪をひとつに束ね、
これも近隣の山中に身を隠していた
薛麗は、腰に
不敵に顔を歪めた許淵は薛宇に返した。
「一度でも楽な方に逃げると、
微笑を浮かせた薛宇は、娘の薛麗から獲物を受け取ると許淵に渡した。
「差し入れだ。指示を出せ、許淵。俺と薛麗は何をすればいい?」
許淵は、薛宇に
「薛姉!」
「ああ、許林杏!」
薛麗を見つけた許林杏が駈け寄った。身を屈めた薛麗が許林杏を抱き締めた。
母のいない許林杏は、薛麗によく
「――――⁉」
突如、目を剥いたのは薛麗だった。山のような薪が移動しているようだった。見れば、巨軀の許褚が背に大量の薪を負っていた。
その許褚が、薛麗の横を通り様、冷めた視線を投げた。
「邪魔だ。遊ぶなら向こうで遊べ」
「ああん⁉」
ぼそりと言った許褚に、薛麗はいきり立つと
「黙れ許褚! 誰が邪魔だって?
「お前ら、喧嘩は後にしろよ」
やれやれ顔を
許褚、張鴦、薛麗の三人は、気が合っていると思えば仲違いをしている。共に行動をしなければいいのに、近くに姿が見えないと互いに寂しさを覚える
少しずつ、ほんの少しずつだったが、元の邑に戻っていくようだった。
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