第28話 ネオンが言った
「え…あぁ…」
少し表情が硬くなった気がした
さっきまでの気まずい雰囲気から一変してた
まだ早かったかな なんて考えたけど後の祭りだった
「わたしは今の本条くん知ってる 『赤毛のアン』について話してた本条くんや 弟くんや妹さんと居た本条くんも知ってる だからわたしの中にある本条くんは今の本条くんと同じなの」
「だけど学校での本条くんはちがう 『赤毛のアン』の時に言ってた【日々を楽しむ】ってのどこいったの?って感じる」
とにかく気になってたこと 知りたいこと 答えてくれるかわかんないけど『えいやっ!』って気持ちで聞いてた
静寂?とはまた違う沈黙が漂ってた
押し黙ってた本条くんが口を開く
「てかさ なんでおれに構うわけ? 憐れみ? 同情? なんかいいことしてるわたし!みたいな?」
え…
なに言ってんの本条くん? それ本気で言ってる?
わたしは耳を疑った
「おれのことなんも知らねぇくせに…」
本条くんからボソボソっと出た言葉をわたしは聞き逃さなかった
予想しなかった返事 予想してなかった言葉
さっきまでの雰囲気はどこいったの
一瞬で頭の中いっぱいになる
「知らないから聞いてるんじゃん」
考えもなく口をついて出るわたしの言葉
「本条くんだってわたしのことなんも知らんくせに」
売り言葉に買い言葉 でも言わずにいれなかった
誰もいない公園はここに来た時のオレンジ色をさらに濃くしていた 時間の流れがそこにあった
「わたしはね この背の高さでずっとからかわれてきた 小学校も中学校も背が高くてなんもいいことなかった からかってくるの男子ばっかり おかげで男子大嫌いになってる」
いつの間にか話してた なんか悔しくて悔しくて
その悔しいがなんなのかわかんないまま 本条くんに自分のこと話してた
本条くんはわたしと目を合わせないけどわたしの話しをじっと聞いてるように見えた
「小学校のときもわたしをしつこくからかってくる男子を突き飛ばしたら わたしが怒られた わたしが大きいんだから手加減しろって感じで 相手にケガさせたのは悪いと思った だからわたしはもっと心を閉ざした 背が高いのはわたしのせい? わたしなんか悪いことした? ずっとずっと自問自答してた」
なんでわたしこんなこと話してんだろ
なんなら涙まで出てこようとしてる
やだ 泣きたくないし これ以上話したくない
「そんな時わたしを救ってくれたのが本だった 本は知らない世界をたくさん見せてくれた 本を読んでる時のわたしは幸せだった 6年の時だっけか図書館で読んだ『赤毛のアン』はわたしにとって日常を変える大きな力をくれた それ以来わたしにとって大切な一冊になってる」
わたしの話し聞いてんだか聞いてないんだかわかんなかった本条くんがいつの間にかこっち見てた
やば 泣きたくないしっ
「中学入っても背が高いのと運動能力の高さからバレー部に誘われたけど バレー部じゃバレー素人で目立つだけのわたしは毛嫌いされて二学期にはバレー部辞めてた それが理由で今まで味方だった女子も少し距離置くようになってた またわたしを『なんで?』が襲った」
「わたしの本への傾倒はさらに進んだ 自分を、心を強くしたいって思いから思想系の本も読み出した そしたら少し周りが幼く思えた 思い上がりなんだろうけど そうした頃にはみんなの成長がわたしに追いついてきた わたしの身長はマイナスじゃなくなってきてた」
ずっと一方的に話すわたしのこと 本条くんはどう思ってんだろ ほんと話したくないのにとまらない わたしの言葉と…なみだ
「そしたらさ 今度は突然モテだした 中3から今まで… 理解できる? できないよね だから高校入ってからずっと断ってた だって無理じゃん 男子嫌いだし そしたら今は今でいい気になってるって陰口たたかれてる どうすりゃいい? わたしどうすればいい?」
落ち着いて冷静にまくし立てるように一気に話しきったわたし ハァハァ言って肩で息してる
ずっと握りしめてたんだ…手のひらに食い込んでた指の跡を見て気づいた
こんなこと話したくなかった なのに今はこれで全部言いたいこと言えたのかな なんても思ってる
「だからね だからわたしは、」
そう言って本条くんの方を向く
わたしのこと見てた本条くんと目が合う
「『赤毛のアン』を大切にしてた【お守り】って言った本条くんにわたしと近いなにかを勝手に感じてた
それが感じとれるのはわたしだからって思ってた
こんな想いをもってるわたしだから感じれるんだって勝手に思い込んでた!!!」
「同情? 憐れみ? 自己満?? そんなわけあるかぁぁぁああ!!! わたしとあんたは全然ちがうっ!!! ぜーーーんぶわたしの思い込みだったんだよ!!!!」
悔しさの原因わかっちゃった
いろんなことがわたしの中で整理ついた感じがした
言いたいこと全部言えるってこういうことだったんだ
今までずっとがまんの連続だった
小学校から中学校そして今まで こんなにはっきり言いたいこと言えたことってあったっけ
スッキリしてるはずなのになぜか涙はとまってなかった
「…ちがわねぇよ」
ん なんか言ってる?本条くん
「ちがわねぇから バカか神楽 勝手におれを見透かすな シンパシー感じんなよな」
本条くんがなんか言ってる
「勝手に親近感かんじるな 迷惑なんだよ なに一人でスッキリしてんだよ 言いたいこと言って自分だけスッキリしやがって」
そう言ってる本条くんの顔は不思議と怖くなかった
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