第6話 それでも…
孤独を感じたわたしは また本の世界へとのめり込んでいった
中学も2年になった頃には小学生の頃は読んでなかった本にまで手を出し始めた
【自己啓発】って言葉を知ってわたしは自分の考えをより広く深くする努力をした
意味がわからなくても昔の人の難しい本も読んだ
カントやデカルト、ニーチェやプラトン 『哲学』なんて意味がわからなくてもわからないなりに読んだ
漱石や太宰や芥川だって読んだ
難しくてもわからないなりに読んだ なにか一つでも心に残ればいいくらいの気持ちだった そのくらい自分の頭の中をいっぱいにさせておきたかった 寂しいなんて思いたくなかった
どんな困難にも打ち勝ちたかった
なんにも悪くない自分が負けるのが嫌だった
そんな自分を納得させたかった
どうして今こんな気持ちになるのか理解したかった
幼いわたしのそれはいつしか好奇心へと変貌を遂げていた いろんなことを知りたい欲求 それすら贅沢に感じられていた この時期とくに多くの本を読んだ気がする わたしの読書は誰にも邪魔されなかった
だってわたしは殆んど一人だったから
2年生になってクラスも変わって花凜ちゃんとも離れたこともわたしが孤独を感じる要因のひとつになっていた
花凜ちゃんが一緒だった頃はまだ教室に居ても一人になることは少なかった
クラスが離れた時 花凜ちゃんはわたしのことを心配してくれてた
これまでのわたしの状況を知っていたから…
わたしは『大丈夫だよ』と花凜ちゃんに告げカバンから本を取り出してニッコリ笑った
それを見て花凜ちゃんがホッとした表情したの今でも覚えてる
1年生の間はわたしの読書に興味を示して同じ本を読んでくれる時もあった花凜ちゃん
二人で本の感想を言い合いできるのホント楽しかった
ここで泣いた、こいつキライだった、主人公には幸せになってほしい…数え上げたらキリがない程の楽しかった思い出
同じことで時間を共有できてるのが嬉しかった
だけど2年生になったわたしが読んでる本は花凜ちゃんには興味がない本だった
もちろんわたしが薦めることもしなかった
たまに花凜ちゃんが読んでおもしろかった本をわたしに貸してくれることがあった
その時がわたしは好きだった 嬉しかった
今わたしが読んでる本は今のわたしにしか必要ないものだったろうから
花凜ちゃんに借りた本でわたしは自分が中学2年生なんだって思える時すらあったくらいだ
花凜ちゃんに借りた本はどれも楽しくおもしろく読めた ふだん読んでる本によってわたしの読解力は増し一般的な小説を読むスピードも速くなっていた
『もう読んだの?』なんて驚かれることもあったが二人して感想を言い合って楽しむ遊びはわたしがちゃんと本を読んでる証だと花凜ちゃんは言ってくれた
そんな花凜ちゃんだって自分の中学生活がある
次第にわたしへの接触は減って行った
それでも花凜ちゃんとは通じ合ってるって思えてた
それとは裏腹にわたしはどんどん強くなっていった
それはもちろん肉体的にではなく精神的に
ほんの少し物事の捉え方が変わっていってた
小さな変化は中学2年生のわたしには大きな力になっていた でもそれはわたしを頑なにもさせていたかもしれない
でも、そうじゃなきゃ楽しめなかったはず
いろんな学校行事やイベントも
全部一人ぼっちで楽しめるもんなんてない
2年生なんてとくにそういうの多いから
修学旅行なんて最たるものだよね
楽しむには楽しむための努力もあったってのがわたしの正直な気持ちだった
自分を偽ってみんなと仲良くできるように努めた
誰もがそうかもしれないけれど わたしがそういう術を覚えたのはこの頃だったように思える
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます