余暇ー快楽研究

虎ノ月まるお

余暇ー快楽研究

初めて書いた小説となります。温かい目でご覧ください。また、エロ要素は全くありません。勘違いさせた方は申し訳ありません。

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 ある小国のお話である。

 この国は王政国家であり、王は、それなりに優秀である。

 というよりも、この国には、優秀とはいえないという国民はいない。

 なぜなら、技術力が非常に高く、物理学、生理学、心理学などの学問が完璧に体系化されており、遺伝子的に相性のいい人との交配を繰り返した結果、凡愚が存在しない国となっていた。

 機械も非常に発達しており、国民たちは優秀でありながら、暇を持て余している。


 王は、ある日突然このようなことを言い出した。

「この世における最大の快楽が欲しい。今の世界は暇すぎるのだ。技術的には、可能ではあると思う。しかし、これまで、危険性を考慮して、手を出さなかった。しかし、今、皆で快楽を求める研究をしよう。」


 実際、国民たちも暇を持て余しており、やりたいこともなかったため、王に同調する形で、快楽を高める研究を始めていった。

 瞬く間にこの研究分野が盛んになるのが、王も雰囲気で感じ取れた。


 国民総がかりで取り組んだので1週間でとあるものが完成した。

 それが、快楽を開発する鎧のような着用具であった。

 これは、パプロフの犬のような条件づけをさまざまな五感の刺激と快楽を結びつけることを可能にしたものであった。様々な刺激との結び付けには訓練が必要であり、訓練には、24時間必要であった。


 補足だが、この国の完成品において、作成が可能なものは、全て理論通りの完璧なものとなっている。ゆえに、失敗品が存在しない。そして、完成品は、王が最初に使用することが慣例となっていた。


 そのため、さっそく、この完成品について王様に報告した。

 すると、王は、当然のごとく、着用した。


 もちろん、その危険性を理解したうえで。


 24時間が経過して、その着用具を脱いだ。

 途端、恍惚の表情を浮かべ、倒れた。


 しかし、誰もやってこない。国民全員が、着用具をつけ、訓練中だったからだ。

 やがて、時間が経過し、着用具を脱ぐ瞬間が訪れる。

 国民皆が、王と同じく、恍惚の表情を浮かべ、倒れた。


 この着用具の危険性、それは、ありとあらゆる刺激が、快楽に変換される。訓練中は、1つの刺激により、快楽の種類が1つと対応を決め、訓練されていく。そのとき、それ以外の快楽が抑制されるようになっている。訓練終了と同時は、快楽を抑制するように作られているため何も起きない。では、それを外すとどうなるか?

 答えは、快楽の波により、脳の処理が、追いつかなくなる。つまり、何もできなくなるということだ。

 実際、心臓発作や脳卒中など血管障害や神経系の障害を起こしているものも少なからずいるだろう。

 しかし、この国の者は、作成したものを使用せずにはいられない。危険性を理解していても。


 結果、この国の人間たちは、恍惚とした表情を浮かべたまま、時が過ぎゆくのであった。


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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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