第2章:異文化との遭遇

嵐を乗り越え、九死に一生を得たヴァイキングたちは、日本の海岸に漂着した。彼らは故郷を遠く離れた見知らぬ土地で、生きるための食料と水を求めて、内陸へと進んだ。

彼らが最初に遭遇したのは、山あいの小さな集落で開かれていた市だった。にぎやかな人々の声、色とりどりの着物、香ばしい匂い。しかし、彼らの目に飛び込んできたのは、見たこともない奇妙な光景だった。そして、その視界の先に、一人の露店商が腰を抜かして座り込んでいる。

ヴァイキングの一人、船長のオーラフは、その商人に近づき、旅の者として敬意を払い、言葉をかけようとした。しかし、彼らが知る言葉は、北欧の言葉と、交易で覚えたわずかな英語のみだった。オーラフは、持っていた硬貨を差し出し、友好的な態度で商人に問いかけた。

「Is the tip included?」(チップは含まれていますか?)

それは、ヴァイキングが異国で物資を調達する際によく使った、ごく一般的なフレーズだった。

しかし、恐怖で震える商人の耳には、その言葉は全く別の意味に響いた。

「いずれてっぺんこえれる?」

山の頂を越え、村々を襲う恐ろしい存在。商人は、目の前の大柄な男が、自分たちの村を襲う計画を語っているのだと勘違いした。彼の顔は青ざめ、さらに身をすくめた。言葉が通じないことから生じたこの小さな勘違いが、やがて伝説の序章を告げることになる。

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