第3話
第三章 SNSの声
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夜のキャンパス近くのカフェ。
璃子は友人の美佳と並んで座っていた。
「見て見て、この投げ銭!」
美佳はスマホを差し出し、誇らしげに笑った。
画面には配信アプリの通知が並んでいる。視聴者から送られたスタンプや金額がリアルタイムで増えていた。
「……すごいね」
璃子はカフェオレを手に取りながら、少し引き気味に微笑んだ。
「でしょ?やっぱり“稼ぐ男が一番”ってコメントも多いんだよね」
美佳は楽しげにスクロールしながら、悪びれもなく言った。
「結婚相手は安定した職業か年収か。みんなそれを口にするし、私もそう思う」
璃子は視線を落とした。
「……愛があれば、なんとかなるんじゃない?」
「それ、亮くんの影響?」
美佳はにやりと笑った。
「でもさ、奨学金抱えてたら結婚したって大変だよ?推し活だってできないよ?」
璃子は返す言葉を失った。
彼女の心の中で、亮の「愛があれば大丈夫」という声と、美佳の「お金がなきゃ不幸になる」という声が重なって響いていた。
カフェの外を見れば、夜道を学生カップルが笑い合いながら歩いている。
璃子はその横顔に羨望と不安を同時に抱いた。
「……私は、どっちを選べばいいんだろう」
そのつぶやきは、誰にも届かないほど小さな声だった。
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第三章・結び
SNSの画面に流れる“現実的な声”は、彼女の心を確かに揺さぶった。
愛か?お金か?
その問いは、もう冗談ではなく、彼女の未来そのものに突き刺さっていた。
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