第10.5話

 最近妙に重たい体を起こし、洗面所へ向かう。今日は小学生最後の日、卒業式だ。

 だというのに何故だろう、特にこれといった卒業することへの感動とか、これから先の中学校へ対する期待・不安とか、そういったものをいまいち感じられないでいた。いつも通りの朝で、いつも通り登校して、いつも通り下校する。ちょっと変わったイベントがあるだけで、普段となんら変わらないのだろう。

『普段』か。いったいいつからあたしの普段はこんな感じになっただろう。

 変わったことといえば、この前の放課後のことだ。気が付いたら下駄箱で気を失っていたのだ。何しに学校に残っていたのか。はたまたこれから校内に入るつもりだったのか。なぜかその時のことが思い出せない。


「まあ、いいわ」


 いろんなことに対する興味や熱意といったものが持てていないような感じがする。どうでもいい、というのとは少し違うけど。

 仲の良かった1学年下の、5年生の友達に会えなくなるのが寂しいと言われても、そうねとしか思えなかった。

 5年生といえば、ちょっとした事件?があったらしいけど、やはり興味がわかなかった。


「冷たいな」


 自分の性格が?それとも今顔にかけた水道水が?どっちもかもね。


 タオルで顔を拭き、鏡に目を向ける。そこにはもう1人の自分が映っていた。

 鏡だから当たり前?確かにそれはそうだが、意味ではない。

 鑑に映る自分の隣に、もう1人自分が映っていた。


 鏡が映す世界が真実であるなら、あたしの隣に、実際に、もう1人の自分がいる。

 自分の目で、鏡越しでなく直接見ようとの方を向いた。怖いとか、驚いたとかはなかった。ただそこにあるものを確認したかった。

 はまるで鏡のように、あたしが振り向くのに合わせて振り向いた。やはりあたしだ、瓜二つだった。

 は目が合うと、ニヤリ、ととても人間とは思えないほどに口角を上げ不気味に笑って見せた。


 それとは逆にあたしの顔は微動だにしなかった。

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