新編 長安変奏曲 補足編(古代~近世官能シリーズ⑨)
🌸モンテ✿クリスト🌸
登場人物と大唐帝国の娼婦事情
🔴新編 長安変奏曲 Ⅰ(古代~近世官能シリーズ⑦)
https://kakuyomu.jp/works/16818792438138557214
🔴新編 長安変奏曲 Ⅱ(古代~近世官能シリーズ⑧)
https://kakuyomu.jp/works/16818792439212215608
の史実の補足編。
登場人物
⚫️ 空海:31歳
真言宗の開祖となる僧。密教の理屈で誘惑を正当化し、スナーヤミラーやエリナに溺れる。
⚫️ 最澄:38歳
天台宗の開祖となる僧。仏陀の例を引き合いに出し、マイトリーイや翠蓮、玉梅に負ける。
⚫️
空海・最澄らを率いる遣唐大使。葛野麻呂は、落ち着いた物腰と老練な外交手腕を持つ貴族で、朝廷の信頼を一身に背負う。
⚫️
実務に長けた真面目な性格で、遣唐使らの秩序を保つことに心血を注いでいた。彼の几帳面さは、使節団の結束を支える柱だった。
⚫️
学問僧で詩と書に優れた風流な若者。空海と語り合う中で互いの志を認め合っていた。逸勢の明るく開放的な人柄は、遣唐使らの緊張を和らげる存在だった。しかし、おっちょこちょいで、場末の娼館「紅花楼」の娼婦、小蘭に金を盗まれ、空海から金を借りたりする。
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強力美女軍団
⚫️ スナーヤミラー:年齢不詳(外見は20歳前後)。第1話に登場
インド(天竺、マガダ国)から飛来した夢魔で、半透明の幻影のような姿で現れる。女の姿では、薄絹のサリーをまとい、黄金の刺繍が月光に輝く。腰をくねらせ、扇情的な舞踊で空海を誘惑し、時に男性形態の稚児に変化して少年のような魅力を振りまく。足首には金鈴を付け、動くたびにカランカランと妖しい音が響く。
「インドの聖なる川のほとりから来たけん、長崎弁みてえな中国語を喋るっちゃね」と、柔らかく抑揚のある中国語で囁く。彼女(彼)の目は夜の星のように輝き、触れることすらできない幻影の体で、仏僧の心を惑わす。
⚫️ マイトリーイ:年齢不詳(外見は19歳前後)。第1話に登場
インド(天竺、ガンダーラ)から飛来した夢魔。元は女性修行者だったが、悟りの果てに夢魔となり、半透明の姿で長安に現れる。女の姿では、薄い絹の衣に仏教の蓮華模様を刺繍し、流れるような舞で空海を誘惑。男性形態では、稚児の姿で清らかな微笑みを浮かべ、経典を囁くように歌う。足首の銀鈴がチリンと鳴り、幻想的な雰囲気を漂わせる。
「インドの寺院育ちやけん、長崎弁みたいな中国語で話すっちゃね」と、穏やかだが妖艶な中国語で語る。彼女(彼)の声は、まるで風にそよぐ竹林のようだ。
⚫️
揚州出身の漢族女性で、長安の平康坊で高級歌妓として名を馳せる。絹の旗袍(チーパオ)をまとい、蓮の花の刺繍が施された衣装は、身体の曲線を際立たせる。優雅な身のこなしで橘逸勢を騙し、詩と酒で石川道益を誘惑する。足首には翡翠の鈴を付け、歩くたびに涼やかな音が響く。
「揚州の生まれで長安に住んどるから、京都弁みたいな中国語を喋るんやでぇ~」と、柔らかく上品な口調で話す。琴を奏でながら李白の詩を歌い、客の心を掴むその姿は、まるで月下の花のようだ。
⚫️
揚州出身の漢族女性で、翠蓮の妹分として平康坊で働く若手歌妓。薄絹の旗袍に梅の花の刺繍を施し、若々しい魅力で橘逸勢を再び惑わし、石川道益の心を揺さぶる。衣装は短めの裙で、動きに合わせて裾が翻る。足首の銀鈴が軽快に鳴り、舞踊は若さと活気に満ちている。
「揚州の生まれで長安に住んどるから、京都弁みたいな中国語を喋るんやでぇ~」と、愛らしい笑顔で囁く。彼女の歌声は清らかで、杜甫の詩を愛らしい節で歌い上げる。
⚫️エリナ:21歳。第2話、第3話に登場
金髪碧眼の突厥(テュルク、北西域の遊牧民)出身の娼婦。騎馬民族の血を引き、平康坊で異国情緒を売りにする。皮革の靴袴に大胆なスリットを入れ、太腿をちらりと見せる淫らな衣装で、橘逸勢と空海を誘惑。腰に巻いた毛織の帯には銀の装飾が輝き、足首の銅鈴がカランと鳴る。
「西域の北の騎馬民族出身だっけがら、東北弁みてぇな中国語を喋るんだず」と、力強く野性味ある中国語で話す。胡旋舞を踊りながら、突厥の戦士のような気迫で客を引きつける。
⚫️
トハラ(大宛、現在のフェルガナ盆地)出身の女性。シルクロードの交易で長安に流れ着き、歌妓として平康坊で働く。薄絹の胡服にトハラの伝統的な幾何学模様を刺繍し、腰を振る舞踊で客を魅了する。窄袖の衣装と短い裙に、足首の銀鈴が軽快な音を響かせる。
「おいらの故郷は西域の馬車が走る国だ、唐の言葉はちょいと荒っぽいんだっちゃ」と、仙台弁のような親しみやすい中国語で話す。箜篌(くご)を奏で、トハラの民謡を歌い、異国の風を長安に持ち込む。
⚫️
日本の兵庫(摂津国)出身。遣唐使船に随行した商人の娘だったが、父親の借金のため長安で奴隷として売られ、平康坊の娼館に身を置く。絹の袍に日本の和風の花柄を刺繍した衣装をまとい、優雅な舞で客の目を奪う。窄袖の上衣と短い裙に、足首には小さな銅鈴を付け、歩くたびに軽やかな音を立てる。
「わしの故郷は海と山の国じゃけ、唐の言葉はちょいとたどたどしいんよ」と、広島弁のような温かみのある中国語で話す。和歌を唐詩風にアレンジして歌い、客に日本の風情を伝える。
⚫️
ソグディアナ(康国、現在のサマルカンド近郊)出身のソグド人娼婦。透ける絹の胡服を身にまとい、窄袖の短い上衣と裾が広がる裙で、胡旋舞を踊る。腰に巻いた金糸の帯が光を反射し、足首の銅鈴がチリチリと音を立てる。彼女の舞は、ソグドの騎馬文化を思わせる力強い動きと優雅さを兼ね備える。
「わいの故郷は馬と風の国やけん、唐の言葉はちいとハキハキしとるっちゃ」と、博多弁のような歯切れのいい中国語で話す。葡萄酒を愛し、客と杯を交わしながらソグドの歌を口ずさむ。
⚫️
ペルシア(サーサーン朝、現在のイラン)出身。安禄山の乱後に奴隷として長安に連れてこられた。薄い絹の胡服にペルシア風の花模様の刺繍を施し、腰をくねらせて踊る胡旋舞で客を惹きつける。衣装は窄袖のチュニックと短い裙で、足首には金色の鈴が鳴り響く。髪には碧玉の髪飾りを挿し、異国情緒を漂わせる。
「おらの故郷はペルシアの砂漠だあ、唐の言葉はちょっこし訛っとるんでね」と、津軽弁のような素朴で力強い中国語で話す。ペルシアの竪琴を弾き、哀愁を帯びた旋律で客を魅了する。
⚫️
洛陽出身の漢族の女性。かつて地方の名家の娘だったが、家の没落により長安の平康坊に売られた。薄絹の袍(ほう)をまとい、袖口に繊細な牡丹の刺繍が施された衣装で客を魅了する。彼女の舞踊は、洛陽の雅やかな文化を反映し、緩やかな身のこなしで詩を吟じながら舞う。足首には銀の鈴を付け、歩くたびに清らかな音が響く。
「洛陽の花街で育ったんやさかい、言葉は上品な京ことばになるんやわ」と、京都弁のような柔らかく優雅な中国語で話す。琴の名手で、杜甫の詩を歌にのせ、客の心を掴むその姿は月光のようだ。
⚫️小梅:20歳。第12話に登場
漢族(并州出身)。戦乱で家族を失い、人買いに売られて平康坊の南曲にある低級酒肆「醉月楼」に身を置く。薄い麻の襦裙に簡素な花模様の刺繍を施し、素朴な歌で客を慰める。窄袖の上衣と短い裙は動きやすく、足首には小さな銅簪を髪に挿すだけで、鈴は付けない。彼女の控えめな仕草は、庶民の客に親しみを与える。
「わての故郷は戦で焼けた并州や、唐の言葉はちょいと硬いんよ」と、博多弁のような歯切れのいい中国語で話す。簡単な民謡を歌い、醉月楼の薄暗い座敷にささやかな温もりを添える。
⚫️小蘭:19歳。第12話に登場
漢族(洛陽出身)。貧しい商人の娘として生まれ、父親の借金のため平康坊の南曲にある低級娼館「紅花楼」に売られた。薄い麻の旗袍に大胆なスリットを入れ、胡旋舞で客を惹きつける。窄袖の上衣と短い裙に、腰には安物の銅鈴が付いた麻の帯を巻き、動くたびにチリチリと軽快な音を立てる。彼女の大胆な笑顔は、紅花楼の雑多な雰囲気を彩る。
「わしの故郷は洛陽の裏町やけん、唐の言葉はちいとハキハキしとるっちゃ」と、博多弁のような軽快な中国語で話す。胡旋舞を踊りながら、安い葡萄酒を客と交わし、ちゃっかり金子をくすねる。
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その他の登場人物
⚫️
中堅商家の若旦那、
⚫️
落ち着いた物腰で絹の
⚫️
詩を愛する風流人で、
⚫️
剣術に優れた豪快な若者で、腰に短剣を差す。
⚫️
⚫️
娼館「花月楼」の
⚫️
娼館「花月楼」の
⚫️
⚫️ ヴィシュヌパトラ(Viṣṇupatra)、25歳。第6話に登場
若き婆羅門教の修行者。名は「ヴィシュヌの葉」を意味し、神聖な存在を象徴していた。彼は厳格な禁欲生活を送り、モークシャを追求していたが、心の奥底に抑えた欲望が燻っていた。マイトリーイにより堕天させられる。
⚫️ スーリヤヴァティー(Sūryavatī)、22歳。第6話に登場
村娘。名は「太陽の娘」を意味し、明るく純朴な女性だったが、結婚を控え、秘めた情欲が心に渦巻いていた。マイトリーイにより堕天させられる。
⚫️ 婆羅門僧のガウタマ・シッダールタ、第7話に登場
⚫️
グプタ朝を滅亡させ、大規模な仏教弾圧が行なった。「ミヒラクラ王の破仏」と呼ばれる。
⚫️佐伯次郎:28歳、第12話に登場
橘逸勢の飲み友達で、安酒屋の酒肆「醉月楼」の常連。遣唐使一行の船員。豪快で剣術に自信がある。
⚫️高橋三郎:26歳、第12話に登場
橘逸勢の飲み友達で、安酒屋の酒肆「醉月楼」の常連。遣唐使一行に随伴した商人。おっちょこちょいだが詩が得意。
⚫️麻の襦裙に紅を塗った唇の熟女:45歳、第12話に登場
安酒屋の酒肆「醉月楼」の女将。高級酒肆「花月楼」よりかなり格下。
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史実の背景と創作の根拠
漢族(洛陽出身):洛陽は唐の副都であり、文化的・経済的に繁栄。『北里志』には、洛陽出身の歌妓が長安で活躍した記録がある。没落した名家の娘が娼婦となるケースは『唐詩紀事』に見られる。
ソグド人:ソグド人はシルクロード交易の中心であり、胡旋舞や音楽で知られた(『新唐書・西域伝』)。長安の平康坊では「胡姬」が人気で、鹿児島弁のような中国語はソグド人のアクセントを反映した創作。
ペルシア人:サーサーン朝ペルシアの女性は、安禄山の乱後に奴隷として流入(『旧唐書』)。ペルシア風の舞踊や音楽が歓楽街で人気だった(『唐会要』)。
日本人:遣唐使の記録(『続日本紀』)によると、日本から唐に渡った商人の家族が長安に滞在。奴隷として売られた女性が娼婦となるケースは、唐の歓楽街の多様性を反映。
トハラ:トハラ(大宛)はシルクロードの要衝で、交易で長安に流入した女性がいた(『新唐書・西域伝』)。箜篌や舞踊は西域文化の特徴。
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大唐帝国の娼婦事情
唐の時代(618~907年)、特に800年頃の長安(現在の西安)は、シルクロードの東端に位置する国際的な大都市であり、人口百万人を超える世界最大級の都市だった。この時期、長安は中国の漢族だけでなく、中央アジア、インド(天竺)、黒海沿岸地域を含む多様な地域からの人々が集まるコスモポリタンな都市であり、娼婦(売春婦や高級妓女、歌妓など)もまた多様な出自を持つ女性たちで構成されていた。
800年頃の長安にいたであろう娼婦の出身地は、漢族の女性や、中央アジア、天竺、黒海沿岸国からの女性を含めて以下のようになっていた。
長安の娼婦の社会的背景
唐代の長安では、娼婦は単なる売春婦から高級妓女(歌妓や舞妓)まで幅広い地位にあった。高級妓女は詩や音楽、舞踊に精通し、官僚や貴族の社交の場で重要な役割を果たしていた。長安の繁華街や歓楽街、特に平康坊(北里)は娼館が集中し、国内外から集まった女性たちが働いていた。
『長安志』や『唐代詩集』などの文献によれば、娼婦の中には没落した名家の娘や、地方から連れてこられた女性、さらにはシルクロードを通じて交易や奴隷貿易で流入した異国の女性も含まれていた。
シルクロードの交易や外交により、中央アジアやインド、ペルシア、さらには黒海沿岸地域からの人々が長安に流入。『唐会要』や『新唐書』には、外国の商人、使節、奴隷が長安に滞在した記録があり、女性の中には奴隷として売られ、娼婦として働く者もいた。
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唐代長安の娼婦の出身地
漢族の女性(揚州以外の地域)
長安周辺(関中地方):
長安のある京兆府(現在の陝西省)出身の女性。没落した貴族や官僚の娘が、経済的困窮から娼婦となるケースが多かった。『北里志』には、平康坊の娼婦に地元の女性が含まれる記述がある。
洛陽:
唐の副都であり、長安と並ぶ大都市。洛陽から長安に移住した女性が、歌妓や舞妓として活動。『新唐書』によると、洛陽は文化の中心地であり、芸能に優れた女性が長安に送られた。
江南地域(蘇州、杭州など):
揚州以外の江南地域は経済的に繁栄し、美女の産地として知られた。蘇州や杭州の女性は、詩や音楽に優れ、高級妓女として長安で活躍。『唐詩紀事』に登場する妓女の記述に、江南出身者が見られる。
四川(成都):
四川は唐代に文化と経済が発展し、成都から長安に出てきた女性が娼婦や歌妓として働いた。杜甫の詩にも、四川出身の女性が長安で活躍する様子がうかがえる。
河北・河南:
これらの地域は人口が多く、貧困層の女性が長安に売られ、娼婦として働く例があった。『旧唐書』には、地方から流入した女性が歓楽街で働く記述がある。
中央アジア出身の女性
ソグディアナ(康国、安国など):現在のウズベキスタンやタジキスタンに相当する地域。ソグド人はシルクロードの交易で活躍し、女性も奴隷や舞妓として長安に流入。『新唐書・西域伝』には、ソグド人の女性が舞踊(胡旋舞など)で知られた記録がある。彼女たちは「胡姬」と呼ばれ、異国情緒を売りにした高級妓女として人気だった。
トハラ(大宛、貴霜など):
現在のアフガニスタンやパキスタン北部。クシャーナ朝の影響下で、仏教や文化が栄えた地域の女性が、奴隷貿易や交易を通じて長安に連れてこられた。『魏書』や『隋書』には、中央アジアからの奴隷女性が都市で働く記述がある。
突厥(テュルク):
突厥系の遊牧民の女性は、戦争捕虜や貢物として長安に送られ、一部が娼婦となった。『旧唐書・突厥伝』によると、突厥の女性は唐の宮廷や歓楽街で舞踊や音楽を披露した。
ウイグル(回鶻):
ウイグル人は唐と密接な関係を持ち、長安に多くのウイグル人が居住。『新唐書・回鶻伝』には、ウイグル女性が長安で芸能に従事した記録があり、娼婦として働く者もいたと考えられる。
天竺(インド)出身の女性
マガダ国(現在のビハール州):
仏教の中心地であり、唐代には玄奘などの僧侶がインドから長安に経典を持ち帰った。『大唐西域記』によると、インドからの女性(特に仏教関連の巡礼者や奴隷)が長安に流入し、一部は歓楽街で働いた可能性がある。彼女たちはエキゾチックな外見や舞踊で注目された。
南インド(チョーラ朝など):
南インドからの商人や巡礼者がシルクロードや海路を通じて中国に到達。『唐会要』には、インド人コミュニティが広州や長安に存在した記録があり、女性が奴隷や芸能者として娼婦となるケースがあった。
ガンダーラ(現在のペシャワール周辺):
ガンダーラは仏教とヘレニズム文化の融合地で、中央アジア経由で女性が長安に流入。彼女たちは仏教寺院や歓楽街で舞踊や音楽を披露し、高級妓女として活動した可能性が高い。
黒海沿岸国出身の女性
ペルシア(サーサーン朝):
ペルシア人はシルクロードを通じて長安に多く居住し、『新唐書・西域伝』にはペルシア人コミュニティの存在が記される。ペルシア女性は、奴隷や交易の一環として長安に連れてこられ、胡旋舞などのエキゾチックな舞踊で知られた。彼女たちは高級妓女として平康坊で人気だった。
ビザンツ帝国(東ローマ帝国):
黒海沿岸のビザンツ帝国との直接交易は限定的だったが、シルクロードを通じてビザンツの文化が流入。『唐会要』には、ビザンツからの使節が長安を訪れた記録があり、随行した女性や奴隷が歓楽街で働くケースがあったと考えられる。彼女たちは金髪や青い目などの特徴で異国情緒を売りにした。
ソグド系ペルシア人(黒海沿岸の交易都市経由):
黒海沿岸の交易都市(例:トレペゾンド)を通じてソグド系ペルシア人が長安に流入。『世説新語』や『北史』には、ソグド系女性が長安の歓楽街で舞踊や音楽を提供した記述がある。
その他の地域
朝鮮半島(新羅、高句麗):
新羅や高句麗からの使節や捕虜が長安に送られ、女性の一部が娼婦として働いた。『三国史記』や『新唐書・東夷伝』には、新羅女性が唐の都市で芸能に従事した記録がある。
アラビア(大食):
アラブ商人が広州や揚州を経由して長安に到達。『旧唐書・大食伝』によると、アラブ人コミュニティが長安に存在し、女性が奴隷や芸能者として歓楽街で活動した可能性がある。
東南アジア(真臘、扶南など):
海路を通じて東南アジアからの女性が広州経由で長安に流入。『新唐書・南蛮伝』には、東南アジアの女性が唐の都市で働く記述があり、一部は娼婦として活動した。
史実の根拠
長安の国際性:長安はシルクロードの終点であり、ペルシア、アラビア、中央アジア、インドからの商人や使節が集まった()。『新唐書・西域伝』には、ソグド人、ペルシア人、ウイグル人などのコミュニティが長安に居住した記録があり、女性もこれに含まれる。
奴隷貿易:
中央アジアや黒海沿岸からの女性は、奴隷として売買されることがあった。『唐会要』や『北史』には、戦争捕虜や交易で連れてこられた女性が都市で働く記述がある。たとえば、756年の安禄山の乱後、ウイグルやアラブ人が長安に流入し、女性も娼婦として活動した。
歓楽街の構造:
平康坊は長安の歓楽街の中心で、漢族だけでなく異国の女性が働いていた。『北里志』には、胡姬(異国の女性)が人気だった記述がある。杜牧の詩にも、揚州や長安の娼婦が多様な出自を持つことが示唆される。
文化的影響:
中央アジアの胡旋舞やペルシアの音楽が長安で流行し、これを披露する女性は高級妓女として重宝された()。これらの女性は、ソグディアナやペルシア出身であることが多かった。
揚州の影響:
揚州は唐の経済中心であり、多くの娼婦が長安に送られたが、長安自体の多様性により、揚州以外の出身者も多く存在した。
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