第33話 ヴァルグのメッセージ

王城の作戦室。

若き王は玉座から高らかに命じた。

「次の攻撃を準備せよ」


ヴァルグは頭を垂れた。

「……仰せのままに。

 ただ、今度は結界を揺らすだけでも十分かもしれません」


ヴァルグの提案に、王は頷く。

「ふむ……アルディナの反撃をあおっても仕方ないかもしれぬな。

 私とて、アルディナの民をいたずらに傷つけたいわけではないのだ」


* * *


ヴァルグは光の管に干渉パターンを走らせる。

アルディナの矩形波と、ヴェルトリアの干渉縞。

本来なら相容れぬ二つを、一つの周期の中で重ね合わせた。

その一点で二つの波が交わり、まるで“橋”を架けるかのように光った。


(……これが、俺の望みだ。両国の技術を一つにする。そのために、アルディナに一度帰る)


そう胸に決めたあとで、ふと考える。

(……一度、か。そうか……俺はもうヴェルトリアの人間になっていたんだな)


思い返して、少し可笑しくなった。


* * *


砦の観測室。

水晶板に乱れる波形を見て、リィナが息を呑む。

「また妨害信号が……!」


だがソーマは手をかざして制した。

「……待って」


矩形のパルスに、干渉縞の曲線が重なり合っている。

しかも一周期ごとに必ず、二つの波が交わる“結合点”があった。


「これは……偶然じゃない」

ソーマの声が震える。

「アルディナとヴェルトリアの技術を重ね合わせている。

 ……“融合しよう”って、そう伝えてきてるのか?」


リィナとエルドランは顔を見合わせた。

「敵がそんな意図を?」

「いや、危険じゃ……」


それでもソーマの胸には、確かな直感があった。

(ヴァルグ……あなたは、平和を望んでいるんだな)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る