愛を知らない私へ
柳 アキ
ずっとひとりで
私が生まれたとき、街は孤独だった。
怒号、悲鳴、絶叫。そんなものが飛び交う中で私は生まれたんだって。
逃げた私も気づけばひとり。
流れに身を任せて、知らない人について行っていた。
私を産んだ人はもういなかった。
私は生きたかった。知りたかった。
でもそれは孤独を犠牲にしなければならなかった。
なぜ街は襲われた?
生まれる前の街はなにか悪いことをしたのか?
ただそれだけだったはずだった。
静かなところだ。誰もいなくて植物も豊富。当分困ることはないだろう。
きれいな水も流れていて
さわやかな風
温かい日も差す。
チョウが戯れ
トンボが水辺に訪れる
カラスらは木の上で作業をしている
たまに私の毛をむしっては木の上にまた戻る
私は……
ひとりで眠っている。
木の根を枕に
陽を掛けて
風を子守唄に。
また私は知りたくなった。
ふたりで居るのは楽しいのか
寂しいってなんだろう
そう考えたら。
私はずっとひとりで居るのが怖くなった。
だれか…誰でもいい。
仲間の元へ
ただ知りたいだけだったのに、
いつしか私は欲していた。贅沢な話だ。
でも、知りたい。欲しい。
「愛を知りたい」
試しに私は街へ戻った。
元、街へ。
そこはもう街なんて呼べたもんじゃなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます