第32話 神明の拠点

「座標から神明の居住地を特定しました。地上に置いてあるドローンを動かすのは危険なので、マップの旧画像しか見られませんが、大体こんな場所です」

「さすが博士、仕事が早いぜ」


 フリーダムのゴードンさんから座標が送られて来て、博士が神明の居住地の位置を特定した。ネットのマップを使えば昔の画像なら見る事が出来る。その映像は何年も前のものだったり、最近のものだったりとまちまちだけど、地上の映像って言ったらそんなに頻繁に更新はされていないんだと思う。


「旧防衛省の一角です。この広大な敷地のどこかに、神明の拠点があります」

「それはマップには映ってねぇのか?」

「このマップの画像自体五年前のものですし、拠点は他の建物と同化させて廃墟っぽくしてある可能性が高いです。だから、この映像で特定するのは難しいですね」

「俺らの地上でのアジトがある西新宿エリアとは反対側だったか。こっちの方はあんまりドローンでも探索していなかったな。それで漏れてたのか?」

「そうかもしれませんし、神明の居住地の擬態がとても巧みだったという可能性もあります」

「それで? この広大な敷地から、どうスムーズに神明の居住地を特定するって言うんだ?」


 言われてみればそうだ。ここに映っている旧防衛省の敷地って物凄く広い。しかも、廃墟に擬態した建物の中から一点を探し出すだなんてとても難しい事のように思える。それも、博士の閃きで何とかなったりするのだろうか?


「一番簡単なのは、エアコンの室外機を見付ける事です」

「ほう?」

「動いている室外機を見付けるんです。今は十月とは言えまだまだ暑いです。地上は四十五度くらいはあると思います。真夏の五十度と比べればマシですが、四十五度はまだまだ暑い。エアコンを使用しなかったら死ぬレベルです」

「それを、地下にいながらにしてどう見付けるか……」

「僕に妙案があります。任せて下さい」


 そう言うと博士はニヤリと口の端を上げた。あと二週間くらいで神明襲撃の日だけど、それまでに間に合う作戦なのかな?


「ボクはその作戦に使うマシンを作るために二日間くらいを必要とします。だから早速作業に取り掛かりたい。それを使えば神明の居住地は数時間から数日で割り出せます。でも、作戦を練るためにも行動は早い方が良い。だから、部屋に引っ込ませてもらいますよ。あまり声を掛けに来ないで下さいね。集中したいですから」

「分かったよ、博士」


 そう言うと、博士はさっさと部屋に引っ込んでしまった。どんな装置を作るのかわくわくしている僕がいる。あの天才博士の事だから、びっくりするような装置を作るに違いない。


「それじゃぁよ、博士の装置が出来るまでの二日間、ピュアとベイビーはいつも通りトレーニングだな。トレーニングの方はどうなってる、ピュア」


 わっ。僕に質問が飛んできた。そうだよな、凜々花の教育係は自然と僕がなっちゃったんだものな。


「ベイビーも大分筋肉が付いてきました。博士がカスタマイズしてくれたマシンガンにも慣れてきたみたいですけど、まだちょっと勢い余ってぶれることがあるのでトレーニングが必要です。それと、ターボシューズの制御は見事なものです。僕なんてあっという間に身のこなしについては抜かれました。ベイビーだったら大抵の攻撃はかわせると思います」


 凜々花の方をふと見ると、照れくさそうに俯いてしまっている。


「よし。防御的には上出来だな。あいつら、レーザー銃を主にしているとはいえ、縦横無尽に撃って来る可能性があるからな。あれは飛距離が長いし、触れたら一発で身体が麻痺して気絶しちまう。だから、絶対にレーザー銃はかわせるようになれ。ピュア、お前も負けたとか言ってねぇでもっと精進しろ。お前を失うと戦力的にキツいからな。それと、マシンガンか? もっと軽量にしたければ博士に頼むが、どうする、ベイビー」

 

 凜々花は「うーん」と顎に手をやって考え込むと、「でも……」と言葉を続けた。


「博士は何かの装置を作るのに忙しいんでしょう? わたしの事で煩わせたくないの。それに、もう少し練習すれば制御できるような気がしてる。ボスが沢山たんぱく質を摂らせてくれるから、毎日筋肉が増えて行っているような気がするし。体幹をもっと鍛えれば何とかなるって気がするわ」

「そうか。それならそれで良い。ガール、お前は引き続き俺と作戦を考えてくれ」

「了解よ~」


 こうして、それぞれの神明襲撃の日までのスケジュールが決定した。


 二日経てば博士が何か凄い装置を完成させて来る。僕はそれが楽しみで仕方ない。


 二週間後に、僕は笑っているのだろうか? それとも、この世からいなくなっているのだろうか。


 戦いに負けたくない。神明を確実に倒したい。


 僕の拳に、自然と力が入る。


「ところでよ、ピュア」

「え?」

「ちょっと面貸してもらって良いか? お前とサシで話してぇ」


 え? え? 何だろう。ボスが僕に一対一で用事があるって何だろう。僕、何かヘマでもしたかな!?


「そんな怯えるなよ。男同士のちょっとしたコミュニケーションだよ」

「……男同士の……」

「あらぁ、良いじゃなぁい、ピュア。ボスって普段は怖いけど、二人っきりになると優しいのよ~」

「そ、それは相手がガールさんだからじゃないですか?」

「あはは、そうかもね~」


 というわけで、僕はボスと二人っきりで出掛ける事になった。どこに行くんだろう。昔読んだ古典文学では、こういう時は海に行って、海を眺めながら『青春』するんだ。


 でも、この地下世界には海は無い。地上の海になんて行くわけがないし、本当……どこに行くんだろう……?

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