ご奉仕したいされたい花菱姉妹

鵺野かげり

第1話 目覚めの時間

 まったく、居候の分際でいつまで醜く惰眠を貪るつもりなのかしら。

 ご主人様からの命令よ。即刻、目を覚ましなさい!


 下賤な豚に、わたくしの朝を邪魔する権利などないわ。

 明日からは、起こされる前に自分で朝の準備を整えておきなさい。


 ……わたくしの言葉が聞こえないのかしら?

 まさか、まだ寝ぼけているなんて言わせないわよ。

 いいから、さっさと起きて、わたくしの部屋へ来なさい。


 これから朝の務めを教えてあげるわ。

 ふふふ、せいぜい頑張ることね。

 それから、妹の桃に変な気を起こしちゃダメよ。弁えなさい。


 もし、わたくしの機嫌を損ねたらどうなるか……分かっているわよね?


◆◇◆


 もう、桜姉さまったら……いつも意地悪なんだから。

 びっくりしましたよね、ご主人様。

 ごめんなさい、いきなり大きな声で。


 まだお休みになりたいのでしょうか?

 お布団から出るのが辛いようでしたら、もうちょっとだけ、このまま寝ていますか?

 う~ん、でも……また桜姉さまが怒っちゃうかもしれないし……


 ゆっくり少しずつでも構いませんから、体を起こしてみませんか?

 大丈夫ですよ、桃が手伝いますから……え、抱っこですか?


 ちょっと恥ずかしいけど……うん、おいで♡

 あん♡ そんなにしがみついちゃダメだよぉ♡ 


 もぅ……このまま、『せーの』で起き上がれるかな?

 せーのっ……うん、起っきできたね♡ すごいね♡ えらいね♡


 もうちょっとだけ頑張れるかな?

 朝ごはんは、ご主人様の好きなものを、わたしがこっそり作って差し上げますから、ちゃんと目を覚ましてくださいね♡


◆◇◆


 やっと起きたようね、下僕。

 愚図な豚のせいで、朝の貴重な時間が無駄になってしまったわ。

 この時間の埋め合わせ、どうしてくれるのかしら?


 謝罪だけでは済まされないわよ。

 さあ、今すぐにわたくしの部屋へ来なさい。

 ぐずぐずしない、いいから早く。

 わたくしを待たせるなんて、万死に値するわ。覚悟しておきなさいっ。


 ふふ、今日は一日みっちり奉仕させてあげるわ。

 わたくしのために尽くせることを、光栄に思うことね。


◆◇◆


 お待ちください、ご主人様。

 桜姉さまが言っていることは気にしなくて良いですから。


 先にお顔を洗わないとダメですよ。それから歯磨きも。

 朝はまず、ちゃんと身だしなみを整えましょう?

 ぜーんぶ、桃が綺麗にしてあげますからね♡


 ご主人様には、いつでも素敵でいてほしいんです。

 ご主人様がピカピカの歯で笑ってくれたら、私も嬉しいですから。

 だから、わたしと一緒に洗面所へ行きましょう?


 桜姉さまは、わたしから説明しておくので大丈夫です、任せてください。

 だから安心して、朝の準備をしましょう、ね♡

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