夢空杏という少女
姫川真
Flower guess #1
コンビニエンスストアの駐車場に停車していた白いクラウンの車内でニンニクの香るチャーハンをかき込んでいた女性警察官の
『ここで、只今入って来たニュースをお伝えいたします』
ラジオから聞こえる緊迫した言葉とほぼ同時に警察無線に一本の連絡が入った。
『
「志湧って管轄外とはいえ隣だけど」
「八重、ラジオの音量上げて」
『繰り返しお伝えいたします。先ほどこちらFM
警察無線による入電の連絡が知らされるとラジオでは入電されていたと思われる誘拐事案の声明文が読み上げられていた。
『……本部から各局、志湧管内、誘拐事案発生、志湧どうぞ』
『志湧了解。どうぞ』
「僕らも志湧に向かおうか」
「待って」
管轄外であっても迎える場所であれば独断専行で捜査を行うことで警察官でありながらその悪名を轟かせている華であったが、今回に限っては現場に向かおうとしないことに八重彦は驚きを隠すことが出来なかった。
「メディアやネットに声明を出すほど大々的な誘拐事案が発生したのに現場に向かわないなんて、華さん何か変なものでも食べた?」
「食べたとしたら八重が買ってきたチャーハンくらいだけど」
「それなら、どうして?」
「これはあくまでも推測の域を出ないけれど、今の文言がどうにも犯行声明に感じられないというか。誘拐だとするなら要求が無いのが気になる。それに、誘拐した少女の自宅ではなくてわざわざメディアやネットに声明を出しているのも違和感がる。なんと言うかわざとニュースになるように仕組んでいるような」
「確かに。それにしても推測ねぇ……」
何気ない一言ではあったが、その一言に八重彦は華の腹違いの妹である緋色の髪の少女の面影を重ねずにはいられなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます