15話 私の気持ち

佳樹が学校に来なくなって2週間が過ぎた…。


嫌いになって…別れた訳じゃないから、ただ淋しい…そんな毎日だった。





…なんて言うのは強がりで…一人の時は…

公園で泣いていた…と言うか泣けてしまう。


家に帰れば千里もいるし、気を張れるけど…


…それでも俯いてしまう。



寝れない夜と眠たくなる学校を繰り返していた。



連絡はするけど既読は付かず…どうしているのだろうと心配になる。


電話もしたけど出てくれない。


一週間が過ぎた頃…電源が落とされたか、電波の届かない所にいるのか…そんなアナウンスが流れた。



家にも何度か行ってみた、…でも呼び鈴が鳴るだけで応答はなかった。



そんなおり、野々原さんからメールが来た。

野々原さんによれば、しばらく塞ぎ込んでいたこと、食事も少ししか手を付けなかった事…。


そして…3日前に…書き置きを残して

祖父母のところに行ったとのことだった。


書き置きには…


お父さんごめんなさい、少し迷ってたけど、

私お爺ちゃんとお祖母ちゃんのところに行くね。

今はここに居るのが辛くて…ごめんなさい。

心配しないでください、変な事考えたり

してないし、ちゃんと田舎に行くから。

ついたら連絡してもらいます。

心配かけてごめんなさい。


―と書いてあったそう。


それが…一昨日に私が知った話し。




私は…あの時を何度も振り返ってる。


お寺を出てから家までは野々原さんと3人で帰った。


家の付近で別れるまで…佳樹は一言も話さず…。

野々原さんにお礼を言われて別れた。


佳樹はその時…目を合わせてくれなかった。


…合わせづらかったんだとは…思う。


野々原さんに肩を抱かれて去っていく姿が…


今だに瞼から離れない。



今どうしているのかな…ご飯食べてるかな…。


そんな事を考えていたら…辛くて…また公園に向かっていた…。


帰って…くるよね…会いたい…そばにいてよ…


あなたの笑顔が見たい…。


募っていく…


どうしょうもなく募っていく。


届かないメールを送る。


遠いあなたにいつか届くと願って。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

元気にしてる?私は元気だよ、嘘。佳樹居なくて辛い、淋しいよ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


我ながら重いな…送信を押して祈るように項垂れる。


最近は直ぐに暗くなる…もっと一人の時間が欲しい…。


…この悲しみに浸って…底まで落ちて行きたい。


…でないと…前を向けない…歩き出せない。


私は私のやるべき事を考えなくちゃいけない。


わかっているんだけど…立ち上がれない…。


膝を抱えてベンチに座っているとメールが届く。


佳樹からじゃないのは音でわかるから…


慌てもしないで開く。


野々原さんからだった、佳樹の様子の連絡が来たらしい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

こんばんは瑞月ちゃん。

佳樹なんだけど、出発した翌日の朝方に向こうに着いてねお袋が、迎えに行ったらしいんだ。

変わらず憔悴しているようだけど、お袋が無理やりご飯を食べさせてくれたらしい。

今日は朝からちゃんと食事も取って、取り敢えず

畑の手伝いを少しさせたとのことです。


あと、佳樹の部屋を見てみたら携帯が置いてあってね。解約しておいて、と書き置きがあったんだ、もちろん解約する気はないし宅配で送るつもりです。それと、美紗樹のお母さんから受け取った忘れ物と一緒に。


瑞月ちゃんには心配ばかりかけて申し訳ない。

また連絡があったら伝えていいかな?


もしも、佳樹の事を忘れたいと言うのなら連絡は辞めようと思います。


瑞月ちゃん自身を大事にして下さい。

かさねがさね申し訳ない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



…もう、何でかな…何でなのかな…

野々原一家は…娘も父も…なんか頭にきた…





人の気持ちを勝手に測らないでほしい!





私は直ぐに野々原さんに電話をした。


『もしもし、瑞月ちゃん?』


「…野々原さん…今平気ですか電話…」


『うん…平気だけど佳樹の―』「野々原さん!」


『はい!?』


「佳樹も…野々原さんも!私の気持ち舐めすぎです!勝手に気持ちを推し量るのやめて下さい!」


『…うん…申し訳ない、でも―』

「でもじゃないんです!私の大切なんです!前に


言いましたよね?佳樹を好きになって!


私…初めて人を好きになったんです!


…大切な気持ちなんです!


私の…大切を…勝手に…決めないでください…。」



『…うん…ありがとう…本当にありがとう、

もう言わないね。すまない…本当にうちの娘は幸せ者だ…』




「…あ…野々原さん…私…ごめんなさい。


会いたくて…会えなくて…こんな…


八つ当たりみたいな真似…ごめんなさい…」



『そんな事ないよ、僕が間違っていた…

君の事は…君が決めるべきだった…これからも連絡が来たらメールなり連絡させてもらうね』



「…ごめん…なさ…い…野々原さんだって…


心配して…言ってくれてるのに…。


わかってるんです…でも…はっきりと嫌われるま


で…諦められないんです」



『うん…僕もそれは思うんだ…佳樹は瑞月ちゃんの事を好きなままだと…』



「…そうであって欲しいと思っています…」



『ありがとう…じゃあまた連絡するね』



「はい…野々原さん…」



『なんだい?』



「怒鳴って…すみませんでした…ごめんなさい」



『うん、此方こそ…まだ外なのかな?早く帰ってゆっくりしてね?もう寒いから』



「…はい…失礼します、本当にごめんなさい…」


『此方こそ、ありがとう。じゃあ』



「はい…」


最低だ…私、こんな八つ当たり…佳樹のお父さんに…。


佳樹…携帯辞める気だったんだ…。


なんか…本当、頭にきた…あの真面目ばか!


取り敢えず…帰ろう、帰って母さんに言おう。


お姉にも相談しよう…。


否定なり拒絶なりされてもいい…私をよく知る人に聞いてもらって相談したい!味方が欲しい。


もちろん、この好きな気持ちのまま私が

何が出来るか、何をするべきか…。


どうしたらあのポンコツを連れ戻せるか…

考えよう!



私はまず、味方になってくれそうなお姉から話してみた、今までの経緯を。


そうしたら…まずいことになった…。



『はぁー?瑞月を振って田舎に逃げたの?』



「お姉…声くそデカ…まぁ…そうなるかな」



『ふうん…頭にくる…別れな!』



「ちょちょ待って!別れないよ?好きだし」


『はぁ〜?あんた馬鹿なの?景気よく振られたんでしょ?あたしの妹になんてことを…あったま来る!』



うわぁーおかしいな…想像以上に予想外…

お姉まじでキレかかってる…どうしよう…。



『ねぇ瑞月…そもそもなんで相手が女なの?あんた前からそうだったの?』


「はい?…あ…えと、うん…そういう事になるかな…あはは…」


『…まぁ…女でも男でもいいけど…流石に厳しいんじゃない?そもそも面倒臭すぎるわよその娘!

何がそこまでいいのよ?』


「え……ん〜わかんない…」


『はぁ〜!!…あんた…まさかもうやったの?

そういう関係まで行ってるってことよね?』


「それは関係ないじゃん、むしろ…その私が手を出した方だし…とにかく好きなの!大事なの!」


『まじか…だいたい…あんた女の女たらしめる所嫌いなはずでしょ?』



「あいつそんなの無いから、真面目で優しくて…それだけに自分で自分を追い詰める真面目ばかだし…私が側に居ないと心配なんだ…」



『…そう…まぁ…いいわ…母さんからも瑞月の様子がおかしいから話し聞いてみてって言われてたし…でも…あんたが手を出したのか…信じられない…』


「……仕方ないじゃん…私、多分…女のほうが好きだし…半分はお姉のせいだし…」


『は?』


「何でもないよ」


『…あんたさ…やっぱり…あの時見てた?』


「…何を」


『…何をって…あの時…あたしの部屋の前に血が垂れてたんだけど…あんたの鼻血じゃない?あれ…』


「さ〜何のこと?」


『はっきり言いなさいよ!返答次第では味方になってあげるから、母さんに上手いこと言ってあげる……で!見てたの!』


「んー……うん…」


『…やっぱりかー…まぁ…それは私も悪いんだけど…そうかー。なんでその時声かけなかったのよ』


「かけれるわけないじゃん!あんな…エッチ場面で…でも、つい見とれて…その…お姉が可愛くて…でも…あの頃そう言うの知らなかったから…

…そしたら鼻血でて…」



『うん…わかった…で気を使って…お腹辛いにも関わらず下まで降りて、ドアを閉め直してただいまと…』


「…そう…」



『…これに関しては私が悪いわね…ごめん…。

でも…なんであんたのセクシュアリティに関係あんの?私』



「…だから、言ったじゃん…一人でしてるお姉が可愛かったの!そう思えちゃったんだから仕方ないじゃん…」



『まじか……ふふ…じゃあ、あの時あんたの事思いながらしてたって言ったらどうすんの?』



まったく、我姉ながら…言うと思った…。



「お姉…その手は食わん!からかいの師匠の手の内くらい私も嫌と言うほど知ってるし、あでも…エロテクとかあるなら教えて貰おうかな♪身体で…うへへ」


『…言うようになったわね…ふふ…。

まぁいいわ…母さんにはやんわりと言っとくからそこも心配ないわよ。

まぁ、会ってみないと何ともだけど、今の所

瑞月の…元彼女?には私は好感度0だからね?』


「うん…まぁ…多分お姉えも会えばわかってくれると思うけど…あたしのだから佳樹は!手を出さないでよ?」


『はいはい、出さない出さない。でまぁひと通り話は聞いたけど…瑞月はどうしたいの?強引に連れ帰っても意味無いでしょ?』


「うん…取り敢えずお姉えには、事情を知っていて欲しかったの、会いに行くにせよ何にせよさ、

遠いから母さん説得するのに協力して欲しいんだ。まだお金無いから行けないけど…」


『なるほど…わかった。取り敢えずその相手の娘は、会ってから私なりにジャッジするとして…。

プチ旅行になる距離だから保護者か…説得役ね?』


「…ん…まぁジャッジは知らんけどそんなとこ」


『大事な妹なんだからするわよ!ジャッジ!』


「ふふ…うん、卯月姉大好き!ありがと」


『…うん、とにかくバイト頑張りな♪』


「うん…少し元気出た、おやすみお姉」


『はいはい…暖かくしなさいよ?おやすみね』


「うん、おやすみ」


取り敢えず動こう…明日バイトの求人見て…

学生だから…コンビニが妥当かな…先は遠いな…。


取り敢えずメール入れとこう佳樹に


でないと私の中で募ってい行ってしまうから、


気持ちを溜め込まないように届けておこう。



大好きだよ…佳樹。





今回はここまで





ほんの暇つぶしでも読んで頂ければ幸いです。

m(_ _)m

―作者より

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