セカンドマイライフ〜その呪いの見る世界〜

玉雫

プロローグ 呪いの始まり

第0話 ストームクラウンの悲劇

 風と豊穣の国『ストームグランデ』の中心に存在するこの国最大のダンジョン『ストームクラウン』に四人の冒険者達が挑んでいた。


 「もう三十層か…ここって全部で何階層あるんだっけ?」


 そう疑問を口にするのは赤髪赤瞳の大盾と大槍を持った青年の戦士でありこのパーティーのリーダー『レイド』だ。


 「このダンジョンは現在わかっている限り全部九十六層、なのでまだまだ浅瀬ね」


 その疑問に答えたのは年はあまり変わらないように見える青髪水色瞳の魔術師の少女『セレーナ』である。


 「まだそれくらいですか…そろそろ休みませんか?前の野営からもうかなりかかっていますし」


 そう提案するのは同じく若い金髪金瞳の祈祷師の少女『ナリア』だ。


 「そう…だね…僕もそろそろ休みたいかな…出てくる魔物は弱いとはいえ連戦が続いているし…」


 提案に同意したのは他の三人よりももう少し幼く見える内気な銀髪銀瞳の少年、荷物持ち件支援術師の『レフィルス』である。


 「前回の野営からだいたい八時間くらいか、そうだな、一旦ここで休もう」


 そのレイドの言葉に三人が頷いた。どうやらこのパーティーはこの少し広くそよ風が吹いている場所で休むらしい。


 「じゃあレフィイ、頼む」


 「わかった…いくよ『心力増幅エネルギーブースト』」


 レフィルスがそう唱え、両手を突き出すと、両中指にはめられた純白の魔石の指輪が光だした。それと同時にレイドとレフィルスの二人の体からそれぞれ赤と白のオーラが湧き上がっていた。


 「よし!また俺とレフィイでテントを立てるからセレーナとナリアは魔物が来ないか見張っててくれ!」


 「わかったわ」


 「わかりました」


 それから二人はレフィルスの背負う荷物から野営具を取り出してテキパキと強化された身体能力でテントと焚き火、そして自動防護結界の魔導具を組み立てた。


 閉鎖空間の洞窟内で焚き火は危険と思われるかもしれないが、さっきも言った通りこのダンジョンには風が一方向に吹いている。なので万が一ここで火事が起こっても煙が滞留するということはないのだ。


 設営も終わり、四人は焚き火を囲んで迷宮探索用の携帯食料を食べながら他愛のない雑談をしていた。


 「そろそろこのダンジョンに入って七日ね」


 「そうですねぇ。このペースで行くと現状判明している九十六層まではあと二週間とちょっとでしょうか」


 「いや、魔物の強さも上がっていくからな。そう上手くもいかないんじゃないか?」


 「そう…だね。でもきっと…僕たちならきっとできるよ…」


 これからの攻略のことを話し合ったり、ダンジョン外でのことを話し合ったり、四人はパーティーメンバーとしてだけでなく仲のいい友人同士として和気あいあいと楽しんでいた。


 そんな時だったのだその異変は…


 ピカッ………


 「ん?何かひかっ————」


 一瞬ダンジョンの奥が光ったと思うと結界が崩壊し、大爆発と爆風が四人を襲った。


 「っ!?あ゛あ゛っ!?」


 「みなさん!ご無事ですか!?」


 「一体何が!?」


 「………えっ!?」


 突然の爆風と痛みで全員が困惑していた。そして次のレイドの一言により戦いが始まった。


 「っ!全員戦闘準備!」


 「っ…『心力増幅エネルギーブースト』『精神強化ソウルブースト』!」


 レフィルスの支援によって四人からはそれぞれ赤、青、金、銀のオーラが湧き上がり、それぞれの技の安定発動のサポートをした。

 

 「女神よ清き者達へ聖なる守りと癒しの息吹を——『聖天防壁ルミナスバリア』『継続回復ルミナスリカバリー!」


 ナリアは黄色の魔石のはまったペンダントが光ったと思うと周りを囲むように黄金の防壁が張り、全員に継続的に傷を癒す祈りを施した。


 「自動迎撃システム『マジックボックス』起動!」


 セレーナは右手に持つ青い魔石がはまった杖を光らせ敵を認識次第自動で迎撃を開始する魔力の箱を四つ展開した。


 「『大防護』!」


 レイドの持つ赤い魔石のはまった大盾は赤く輝く大きな光の盾を築いた。


 「くるぞ!衝撃に備えっ———」


 グルォオ゛オ゛オ゛オ゛!!!


 けたたましい咆哮と共に全身を黒い鱗に覆った大地を四つ足で踏み締める地龍が姿を現した。


 そしてマジックボックスから青い魔力弾が飛び出し着弾した。しかし…その鱗には傷一つついてはいなかった。


 「っ!?一極集中砲『マジックドレイクブレス』!合わせてレイド!!」


 「ああ!『牙突』!」


 竜の息吹を思わせる魔術と獣王の一撃とも言われる戦士の技が混ざり合い紫の螺旋となり地龍に突き刺さった。かに思われた。…それすらも鱗一枚にヒビをつけるにとどまり……ここから反撃が始まる。


 ガシャン!!


 光の壁は龍の一撃によっていとも容易く破壊された。


 「そんな!?『心力最大増幅マキシマムエネルギーブースト!ナリアさんっ!」


 「はい!『聖天防壁・四重奏ルミナスバリア・カルテット』」


 天の使者の加護が最大限に込められた黄金の防壁が四重に張られた。


 ガァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!


 天才の如き龍の息吹は天の加護など些事にすぎない。その全ての防壁を貫き、その構えた大盾にも大穴を開け、戦士の頭と胴体を消し飛ばした。


 「!?レイドさ——」


 ゴギッ!


 ナリアは噛み砕かれその腹の中へと消えた。


 「そんなっ!っレフィ——」


 グシャッ!


 セレーナはその強靭な龍の前脚を赤く染めた。


 「うっ……あ…ぁ……」


 鋭い黄金の眼の先に映る最後の獲物、レフィルスは今何を思っているのだろうか。不思議とその顔に涙はなかった。


 「はぁ…はぁはぁはぁ…………あ」


 グシュ————


 その一撃は静かだった。苦しめ弄ぶために放ったひと突き、そのたったひと突きで人間という矮小な生き物は死ぬのだ。


 

 ——されどその魂はどうだろうか?


 魂の形など誰も知らない。それは尊大で傲慢な龍ですら知らない未知の物質。


 ある霊能者はこう言った


 『魂とは力の根源。死しても変わらず、時に生者を助け、時に


 さて、恐怖と絶望そして憤怒と憎悪に蝕まれ無念の死を遂げた魂はどうなるだろう?


 ————グギャァァァア゛ア゛


 レフィルスの貫かれた胸から突如として灰色の瘴気が吹き出しセレーナの血で濡れた脚を包み込んだ。そしてその内側から破裂したのだ。


 脚先を一つ失った地龍は当然その巨体を支えきれずに転倒した。


 グルッ


 次に残っていたレイドの下半身が突然すごい勢いで右眼に飛んでいき激突した瞬間、破裂した。そして——


 ———ガァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛


 その顔にべっとりとついた血は針となり眼球を貫き脳に到達する寸前で止まった。


 ゴプッ…ゴハァア゛


 続いてそのナリアを噛み砕かき飲み込んだ口から血を吐き出したかと思うと次々と眼から尻から、生殖器から血を吹き出した。


 そうして、美しく強靭な龍は糞尿を垂れ流し、哀れで汚らわしく無惨にゆっくりと…ゆっくりと死んでいくのだった。



 『巡り孵る呪いセカンドマイライフ


 

 最後にその言葉は誰にも聞かれず静かにダンジョン内に響いたらしい。

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