「殺意とは何か」というテーマ。正体不明のその感覚が強いインパクトをもたらしてくれました。
刑事たちが一人の少女から聴取を取ろうとする。少女の名前は沢原かなめ。これまでに多くの人間を手にかけた「殺人鬼」だとわかっている。
なぜかなめは殺人を犯したのか。その問いに対し、「殺意」の命令だったのだと言う。
彼女の言葉の持つ意味は何か。「殺意」というのは本人の心の中にあり、本人が生み出したものなのではないのか。
彼女の犯した罪。彼女の中にある殺意。それは、かなめという少女とイコールであり、本来は「切り離せない」もののはず。
でも、その常識が間違っているとしたら?
その後、刑事たちの身に起こる出来事。「魔が差す」という言葉の通り、人が罪を犯すのには、目には見えない「何か」の力が絡んでいるのではないか。
本作は慣用句などで出てくる「罪」や「魔」、概念としての「殺意」というものについて改めて考えさせられました。
昔からの言葉にある通り、本当に犯罪の類は本人の心の中で完結するものではないのかもしれない。そういう裏の事実をホラーな現象として描き出した本作。抗いがたい「大きな何か」を感じさせられ、強烈な絶望感と焦燥をもたらしてくれる作品でした。