第28話「生徒が行方不明になりました」①

パン!パァンッ!


部室のドアを開けると、乾いた破裂音とともに色とりどりの紙が飛び込んできた。

突然の出来事に、蒼太は目を見開いたままその場に立ち尽くしていた。


「部長!志望校合格、おめでとうございます!!」


満面の笑みを浮かべる美月が拍手をしながら蒼太を迎え入れた。


「これは……」


簡素な部室が可愛らしく飾り付けられており、机には大きなホールケーキと紅茶セットが広げられていた。


既に席に座っていた持田と目が合うと「お疲れさん」と軽く手を挙げられた。


「部長の合格祝いパーティーです!」


三角帽を被った美月が蒼太にたすきを掛け、席へと案内した。


「これ美月ちゃんが準備してくれたの?ありがとう~」


蒼太が部室を見渡しながら顔を輝かせる。


「万莉ちゃんも手伝ってくれたんですよ!今日はバイトで来れなかったんですが……」


「代わりに俺が行くって言ったら、なぜか睨まれたんだよ……」


少し遠くを見つめながら、持田はそっと眉尻を下げた。

そんな持田をよそに、蒼太は切り分けられたショートケーキを幸せそうに頬張った。


「そうそう、お前らに言いたいことがあったんだ」


持田がフォークを揺らしながら、蒼太と美月に視線を向けた。


「……知ってると思うが、最近うちの学校で行方不明の生徒が出てるだろ?」


その言葉に、蒼太と美月の体がぴたりと止まった。


「……最近、また増えたんですよね?」


蒼太の言葉に持田が頷く。


「あぁ。今月に入って三人目だ」


明るい部室の雰囲気とは裏腹に、校内の空気はどこか張りつめていた。


「警察もしょっちゅう出入りしてるだろ。今回の件……お前らは首を突っ込むなよ」


持田が鋭い視線を二人に向ける。


「お前らが優秀なのはわかってる。ただ、今回のことは子どもが関わっていいことじゃない。それはわかるな?」


持田の真剣な瞳に、美月は息を呑んだ。


「……はい。そこの線引きはしっかりしてるつもりです」


蒼太もまた、真剣な表情で小さく頷いた。


持田は小さく息を吐くと表情を和らげた。


「ならいい……それじゃあパーティーの続きだ!よし、俺の十八番を聞かせてやろう」


「隣の部室に迷惑ですよ!!」


立ち上がろうとする持田を美月が必死に止める中、蒼太はじっとケーキを見つめていた。






「あれ?」


翌日、美月がいつものように探偵部の部室へと足を運ぶと、ある事に気が付いた。


ガラガラ――


部室のドアを開けると、蒼太が既に座っていた。


「お疲れ様です。あの、依頼箱移動させたのって部長ですか?」


部室の前に置かれているはずの依頼箱が無くなっていたのだ。


「うん、僕だよ。しばらく依頼の受け付けを止めようと思ってね」


そう言う蒼太の表情はいつになく真剣であった。


「もしかして……」


美月が何かを言いかけたまま視線を向けると、蒼太が小さく頷いた。


「僕たちには、まだ解決できてない事件があるよね」


その言葉に、美月は息を呑む。


「呪いの本と、氷山くんの件、ですよね」


「あぁ。実は、気になることがあって調べてたんだけど……どうやら同一犯かもしれない。それに……」


蒼太は小さく息を吸い込むと、美月の瞳をまっすぐ見つめた。


「犯人がわかったかもしれないんだ」


美月は目を大きく見開いた。

震え出した指先を抑えようと、カバンをぎゅっと握りしめた。


「ただ、その人物は今……」


蒼太が窓の外を見つめると、校内放送が聞こえてきた。


『下校の時刻になりました。連日、校内で行方不明事件が発生しています。

生徒は一人での行動は避け、集団で下校するようお願いします』


静まり返った廊下にアナウンスが鳴り響く――


「別の事件に巻き込まれてるかもしれないんだ」


冷たい風が美月の足元を這うように、そっと通り抜けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る