第25話「入部させてください」①

「美月ちゃん、また書いてるの?」


机には色とりどりのペンといくつもの紙が並んでおり、美月が真剣な表情で何かを書き込んでいた。


「はい!新入部員の勧誘チラシです。そろそろ新しい部員が入ってくれないと廃部になっちゃうので……」


ここ数日、美月が懸命にチラシを作成している姿を蒼太は何度も見かけていた。


「来年の六月までに一人でも入ってくれれば大丈夫でしょ?まだ焦らなくていいんじゃないかなぁ」


「新入生の仮入部期間までは部員一人でもいいって言ってもらえましたが……それで誰も入らなかったら手遅れです!いまのうちに入ってくれる人がいれば安心なんですが……」


美月はチラシを見つめながら、深く息を吐いた。






コンコン――


数日後の放課後、部室のドアを叩く音が響いた。


「どうぞ~」


入って来たのは一人の男子生徒だった。

男子生徒は、緊張した面持ちで軽く会釈をした。


「あの……探偵部のチラシを見たんですが」


「もしかして……入部希望の方ですか!?」


美月がぱっと顔を輝かせる。


「は、はいっ」


美月の顔を見るなり、男子生徒は頬を赤く染めながら目を泳がせた。


「おぉ~、探偵に興味あるのかい?」


「ま、まぁ……面白そうだなと思って」


生返事をする男子生徒に、蒼太は一瞬眉をひそめた。

先ほどからやたらと美月の方を気にしており、蒼太とはほとんど目が合わない。


「こちらへ、どうぞ!」


美月が満面の笑みで席へと案内すると、男子生徒は体を強張らせながら腰を下ろした。


「名前を聞いてもいいかな?何年生?」


「2年C組の榎本聡です」


背が高くがっちりとした体格。

運動部が似合いそうな印象だ。


「榎本くんは、部活入ってなかったの?」


「あ、野球部に入ってます」


「……探偵部と両立する余裕ある?」


蒼太が怪訝な表情で窺った。

部活に複数所属することは問題ないが、野球部ともなるとかなり厳しいだろう。


「だめ、ですかね……?」


「だめではないけど、活動にはちゃんと参加してもらいたいんだ」


榎本は苦い表情を浮かべながら、ちらりと美月の方に視線を向ける。

蒼太は、その様子をじっと見つめていた。


――彼の目的は、別にあるな。


節々から感じていた疑念が、確信へと変わっていく。


「それじゃあ……入部試験受けてもらえるかな?」


「「えっ」」


目を見開く美月と、肩をびくりと跳ねさせる榎本。

二人の声が重なった。


「……私の時は試験なんてなかったですよね?」


ぼそりと美月が耳打ちすると「いいから」と蒼太が小声で返した。


「僕が作った問題、解いてみてもらえるかな?」


蒼太が紙を手渡すと、榎本はかすかに指を震わせた。

問題用紙を見つめながら、ごくりと息を呑み込む音が部室に小さく響いた。


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