祝福と呪いの物語

深信裏有

第1話 祝福

 私は不死身だ。

 それが分かったのは、戦場の真ん中だった。

 国のくだらない戦争によって、脳天を射抜かれ、炎魔法により体を焼かれた。

 初めての復活は戦地の中心だった。

 当時の戦友の言葉によれば。


「戦場のど真ん中で赤子の泣き声が聞こえたと思ったらな、爆炎が起きて、そこからお前が全裸で出てきたんだ。」だそうだ。


 二度目の死の時は私の復活の力が王様に伝わり、不死を望む王様が黒魔術なるものに賭けてよく分からない儀式を宮廷魔術師にさせた時だ。

 結果としては、私は殺され、復活。

 王様は成功したか分からない黒魔術に喜び、私を牢屋にぶち込んだ。

 魔術師が言うには、私の様な力は「祝福」というらしい。


 1年後私は追放という形で国から追い出された。

 そこから私の人生は大きく変わった。

 手は縛られ、目を隠し、馬車に乗せられ、どこかにつれていったと思ったら乱暴に降ろされ、遠くに行く馬車の音を聞きながら、大地に寝転がっていた。

 なんとか拘束を外そうとしてバタバタと動いていたら、魔獣の唸り声が聞こえた。


 ーーグルルルゥ゙  バウッ


 死と言う恐怖は何度だって怖いものだ。

 唸り声が近づく事に腕に力を入れる。

 足がある事を思い出し起き上がろうとする。

 右足、左足と立ち上がり走り出す。

 魔獣の声とは反対の方に走る。

 右、左、右、左

 覚束無い足取りで走る。

 15歩にも満たない歩数で右足に痛みを感じる。

 足を引っ張られ地面に転ぶ。

 背中を押さえられ、起き上がれない。

 魔獣の唸り声と、生温かい液体が背中に伝う。

 そして、首に途轍も無い激痛が襲った。

「ァ゙ッ」

 叫び声にもならなかった。

 そして私は三回目の死を迎えた。

 そして私は新しい生を受けた。

 私の肉を食べていた魔獣はさぞ驚いただろう。

 肉は燃え上がり、魔獣を体内から燃やした。

 燃えた肉体は灰となり、一つに纏まり、肉となり、それは赤子の形になった。

 森の中に居るはずのない赤子の泣き声が響く。


「オギャァオギャァオギャァ」


 周りの木に火が燃え移り、小さな火事となった。

 一分もたたないうちに赤子は幼児程の大きさになり、更に一分後には既に青年と思う程の大きさになった。

 視覚と意識がハッキリとした頃、立ち上がり自分の状況と周りを確認する。

 死んだ事により手と目の拘束具と服が無くなっている。

 横には、私を噛み殺した魔獣が野垂れ死んでいた。

 最も早く解決しなくてはならないのは火事だ。

 私は焦った。

 私が使える水魔術は初級であり、範囲が小さく、鎮火するよりも早く火は広く伝わっていく。


「ウォーターボール!ウォーターボール!」


 クソッ止まらない。もう駄目か。

 そう感じた時、


「……レインコール!」


 その声と共に辺りが暗くなる。

 空を見上げると、暗雲が出来ている。

 ポツリと頬に水が伝う。

 次第に雨は強くなり、体は全身濡れ、雨粒が少し痛みを伴うようになった。

 だが、雨のお陰で小さな火は消え去り、残りの火もその声の主が初級魔法であるウォーターボールで鎮火した。

 唖然として、私は声も出なかった。


「大丈夫かい?」


 森の中の道の向こうから誰かが歩いて来る。

 黒いローブを纏い、フードで顔が見えない。


「君が手紙に書かれていた不死の祝福を受けた子だね。」


 これが師匠との最初の出会いだった。


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祝福と呪いの物語 深信裏有 @koshi311

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