三章 お茶の時間

 こうすると思い出すねえ。

 茶の間で老婆は言った。

 おじいちゃんとよくお茶をしたっけ。

 おじいちゃんとは老婆のおじいさんではなく旦那さんのことだ。

 これはおじいちゃんがね、確か旅行で買ってきたんだよ。

 お茶が入っている腕を示す。

 呪われたお椀、なんて呼ばれていたんだって。 

 これに入れたものを口にした人は死ぬって。

 だからいろんな人に手放されたんだって。かわいそうにねえ。

 私は呪いなんて信じないよ。

 何年もこれを使ってきたんだけれど、ほら普通に生きてるしねえと。

 まったくだ。

 呪いなんて存在しない。

 誰かが言い出した無責任な迷信だ。

 笑っちゃうよね、と言うと老婆はこっくりと頷いた。

 老婆は日向の中、眠ったように目を閉じた。


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