詩でゴンズ(2001)

Nemoto Ryusho

詩でゴンズ(2001)

一日二四時間はオレには長すぎる。

余った一時間がオレを憂うつにする。

淀んだ時間をおれを殺そうとするのだ。


色もなき

この世の空に

色をつけ。


目一杯のドングリ、

おそらく木にはなりえないのだろう。

空っぽの循環。

だけどその循環にすら加われないオレは哀しい。


『町長サンバ』

 愛の歯ブラシが欲しいわ、おっしゃられても

 オレん家の洗面所にもあるわけねえげ。

 愛の歯ブラシどこですか?

 訊いても教えてくれるはずもなく

 上がり框で頭抱えて悩んだ午前二時。

 一匹の芋虫の一言、

「おめえ、生きててつらいだろ」

 捻り潰して靴を履く。

 コンビニに行けば売ってるかしらん、街へ出た。

 歩く人々、歩行者たちはニヤニヤ頬笑んで、

 俺は愛の歯ブラシ持ってんぜ。

 焦ったオレはコンビニに急ぐ。

 愛の歯ブラシまだあるやろか?

 あっちのこっちの明後日の野暮な輝きトゥインクルスター。

 キラキラ星はそこのけそこのけ頭に刺さる。

「おめえ、生きててつらいだろ」

 お味噌は沸いてぐじゅぐじゅになった。

 絶望的な気分。

 参ったオレは電柱に頭をブツケ、

 電柱ゆさゆさ揺らしてみた。

 頭はぱんと破裂した。

 慌てたオレの破片を集めて延命処置。

 だけど破片は足りないの。

 隙間に芋虫入っちゃ困るから

 こうしてニットキャップで守るのです。

 だから破片を見つけたお前さん、

 オレに返して候へや。


 まんねりチョップ。

 ひび割れ早漏。

 キビダンゴの哀しいテキーラ。

 飲めば喜び、あるいはサスライ。

 まなこの絶頂。具体的に、微笑むマダムヤン。

 んでかえって早漏。

 笑って早漏。


 あいつが気に入らねえっていいながら、

 横のこいつが気に入らなくて、

 結局、全部が気に入らない。

 ってことは、

 自分が気に入らないのは己であって、

 変わらねばならぬは己であった。

 でも、

 変わろう、変わろうと、

 唸った結果、変わってみるモノがわからなくて、

 おたまじゃくしが羨ましい。

 

 微笑んでください。

 哀しいのはオレやしね。

 微笑んでください。

 ムカつくのはオレやしね。

 微笑んでください。

 好きなのはオレやしね。

 微笑んでください。

 オレはあんたが好きやけどあんたは愛してくれんしね。

 微笑んでください。

 狂ってんのはオレやしね。

 微笑んでください。

 死ぬのはオレや。いいからオレを愛せ。


 俯いていたら人にぶつかり

 見上げていたら股間を蹴り上げられる。

 前を見ても後ろからドツかれた。

 よって目を潰そうと思う。

 まあ、耳頼りってことで、よろしく。


 引っ張られるのが嫌で

 凧紐を断ち切った。

 でも、ぷらぷら根っこが鬱陶しい。

 落ちちまえばスカッとすっか。

 地面に誰かいてくれたら無用の安楽。

 じっとしていちゃ尻がむずむず、

 坂道に転がった。

 おかげさまで尻は楽。

 でも、いい加減、頭がくらくら。

 いつになったら坂道終わるのかい?

 オレ、結構速いから砕けちまったらいい塩梅。


メールが来なくてもうアカン。

 結局こんなもんかと諦めようと、

 それでも腹がぐるぐるぐる。

 何でオレだけこんなやろ。

 死にたくなって、だけど電話もできなくて、

 結局寝たらすっきりするのかあと、

 それでも何だか寝られない。

ま、これがオレの続いていく、日常。




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