なんだかんだで2話


 なんだかんだで勇者にされたダーくん。


 父親の愛ある助言の通り、仲間を見つけるため酒場へと向かう、最高である武器の鉄パイプと最高である防具のダンボールの盾を装備し、マ・ヌーケ城の城下町を歩き進むダーくん。


 そんなダーくんは、気づいていない。


 学校に行かず、家で部屋にこもり漫画を読みテレビゲームをする毎日。


 酒場が城下町のどこにあるのか、ダーくんは分からずに歩き進んでいる。

 

 果たしてダーくんは、酒場にたどり着けるのか?


 だが、なんだかんだで酒場にたどり着いたダーくん。


 酒場の木製の扉を開き、ダーくんは酒場の中へと入る。


 酒場の中は広く、カウンター席やいくつもあるテーブルに沢山の者達が座っている。


 戦士や格闘家や魔法使いやチンパンジーといった様々な者達が、酒の入ったコップを片手ににぎわっていた。


 ダーくんは、広い酒場の中を見渡し仲間になってくれそうな者を探す。


 14歳のダーくんには、みんなが怖そうに見えた。


 しかし、奥のテーブルに少女が一人座っているのをダーくんは発見する。


 少女は、武道着をまとっていて格闘家の様だった。


 ダーくんは、深く考えずに少女が座るテーブルに歩いて近づいていく。


 少女は、黒髪で肩まで髪を伸ばし武道着姿。年齢は14才のダーくんと同じくらいに見える。


 ダーくんは、木製の椅子に座る少女に声をかける。


「あの、すいません」


 少女は、ダーくんを見上げて顔を見た。


「何? 何か用? ナンパ? ナンパと言っても難破船のナンパじゃないわよ」 


 ダーくんは、少女を仲間に誘う。


「ボクと闘ってくれませんか?」

「キミと闘う?」

「はい、そうです。お願いします」

「今?」

「はい」

「ここで?」

「はい」

 

 少女は椅子から立ち上がり、


「わかった。いくよ」


 少女は、ダーくんの顔面にいきなり正拳突きをかました。


 痛恨の一撃だった。


 ダーくんにとっては、少女との甘酸っぱい初体験。


 ダーくんは、鼻血を吹き出して床に後頭部からぶっ倒れた。


 少女は、床に倒れたダーくんを見下ろした。


「これでいいの? 闘ったよ」


 ダーくんは、鼻血をドクドク流し、


「ち······ちがう······ボクと一緒に······闘って······って意味······グブフォォォ······」


 ダーくんは、気絶した。


 しばらく気を失っていたダーくん。


 ダーくんが、目を覚ますと異臭が鼻をついた。


 どうやら、なんだかんだでゴミ捨て場に放置されたらしい。


 ダーくんは、空を見上げる。


 夕暮れ時になっていた。


 ゴミだらけの地面を見るダーくん。


 鉄パイプとダンボールの盾が、ダーくんの横に転がっている。


 だが、今のダーくんには、そんな物どうでも良かった。


 「······ここはどこ? ボクは······だれ?」


 なんという悲劇、そして喜劇。


 ダーくんは、なんだかんだで記憶喪失になっていた。



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