第23話 忘れられない夜

あの夜から、私の中で何かが壊れてしまった。


翔太に

「彩花のことを考えて」

と言うつもりだったのに、結局は自分が彼を求めてしまった。


母としては、絶対に許されない。

けれど──女としては、もう後戻りできなかった。


彩花が翔太と会っていることは、薄々分かっている。

食卓で頬を赤らめる娘を見るたびに、胸がざわつく。

彼女が見つめているのは、間違いなく翔太。

それでも私は、奪われたくないと願ってしまう。


夜。

駅前の小さなカフェで翔太を呼び出した。


「もう……会わない方がいい」

そう言うために。

でも、翔太の目を見た瞬間、言葉は喉で溶けた。


「……白石さん」

彼の低い声に、心臓が大きく跳ねる。

気づけば、私は視線を逸らせなくなっていた。

その夜、私たちは再び身体を重ねた。

ホテルの薄暗い部屋で、娘と同じ男に抱かれているという背徳が、理性を容赦なく溶かしていく。


「いけない……こんなこと……」

口ではそう繰り返しながらも、私は彼を離せなかった。

帰り道、夜風に晒されても身体の熱は冷めなかった。


──娘と同じ男を求めてしまう私。

その罪を抱えながらも、私は翔太を忘れることができなかった。

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