この村には呪いがかけられている。彼女の目に映った者は、消えてしまう。
その可能性に、村人は等しく恐怖に捕らわれていた。
これは悪いことか? 過去に封じられた闇、その呪いが村を外界の略奪から守っている。
これは良いことか? 身近な者の消失に、生き残る者は自分の明日さえ知ることができない。
だが、その消失は永遠ではない。いずれ帰ってくる。時が凍結されたかのように。
そして私は、幻灯師。生きる手段である映像を映す魔石は、過去の伝説に埋もれ、村の廃れた鉱山にある。
それを手に入れるのが私の使命だが、向き合うべきはこの恐ろしい呪いだけではない。
人々の心に根づいた呪いは、たとえ魔石を得ても、映写には用いることができない。
さらに恐ろしいのは、人々の心の恐怖が、それによって広がってしまうことだ。
映写の力で、この世界を変えたい。
しかし、本当に世界を変えうるものは、嘘よりも強い芝居——人の心を動かす力なのかもしれない。
魂にまで染み込んだような苦境に立ち、幻灯師である私は、行動で信念を貫けるのか。
百年を超える信念を。
ファンタジー世界の奇妙な風習を持った因習村に、貴重な鉱石を求めてやって来た幻灯師。
彼女は取引を提示する。
貴重な鉱石を手に入れる代わりに、呪いを解決しましょう、と。
ホラーチックな始まりから、引き込まれます。
旅人としてやって来た幻灯師オニキスの、最初は礼儀正しくて、ちょっとクセのある性格が段々出てくるのもいい味出てるなと思いました。
村人の胸襟を開かせようとしたり、襲われたときにも、物語を使おうとするのは読書好きにはちょっと刺さるんじゃないでしょうか。
主人公は切れ者ゆえにちょっとしたトゲも感じてしまいますが、後半強烈なサブキャラの登場と共にそれもうまく消化してくれます。
この部分を読んで、作者さんはキャラクターに対してのバランス感覚がいいんだな、と感じました。
楽しめる物語です。
呪われた村「モルフェダ」を舞台にした、圧倒的な筆致のダークファンタジー。
特筆すべきは、主人公オニキスのキャラクター性です。「救済」ではなく「物語」を求める彼女の冷徹で芸術的な狂気が、物語を予測不能な方向へ加速させます。相棒のももが撒き散らすカオスな明るさも、絶望的な世界観の中で最高のスパイスになっています。
幽霊であるラズナの「見られたい」という切実な孤独を、ただのホラーで終わらせず、「映画」という魔法へ昇華させるラストの展開は圧巻。!
記録と記憶、そして虚構。それらが複雑に絡み合い、読後には「今見ている世界も、誰かの演出ではないか」と思わせるような、心地よい余韻が残る傑作です。!