どうすれば書籍化するのだろう?

トシキ障害者文人

第1話 僕は書く仕事をしよう。

先日、本屋に行ったら、「書く仕事」という本があった。僕は、手に取りページをめくってみる。いろいろな書く仕事について、詳しく説明してある。

「今まで、書くと落ち着くから書いてきたけど、仕事にするという頭はなかったな。」

始め方、稼ぎ方、続け方。丁寧に解説してある。面白そうなので買うことにした。


文章を書いてお金を得ること。誰でも「書く仕事」でお金を得られるようになる!

「総合力」が必要だ、とある。この本の筆者は30年間「書く仕事」で生計を立てている。しかし、専門的なライター教育や研修を受けたことがないとある。会社員時代の「営業」の経験が役に立ったという。「書く仕事」は、資格や技術も資金もなく始められるという。僕は、面白くなってきてどんどん読んだ。そして、昨夜、読了した。


真夏の太陽のもと。青空の下。土曜日。

施設の喫煙所に行く。隣りの女子のグループホームから、Kおばさんが出てきた。僕は、無駄だと思いつつも、尋ねる。

「どうしたら、僕は、書籍化できるだろう?」

「そんなことわかりません。」

「もう、自分だけの力では、無理だよ。大学に行くのも違うと思うし。セミナーなんて無いし。」

「自分の思うところでいいんじゃない。」

「やっぱりそれか。」

「それしかないじゃない。」

「自分サイズで行くか。本当だわ。」

「読んで、書いて、繰り返すのよ。」

「努力はしたくないな。当たり前に、普通の事を毎日やりたいな。」

「それがいいわ。」

Kおばさんは、茶色いワンピースに、薄く紅を引いている。

「どこかお出かけですか?」

僕は、尋ねる。

「うん、孫が来るのよ。」

「いいなー。楽しそうで。僕は、自分の子供さえいない。」

「うん。楽しいわよ。」

Kおばさんは、煙草をもみ消すと、

「熱いから中へ入るね。」

と言い残していってしまった。

僕も、煙草を消して、グループホームに戻って、パソコンの前に寝そべった。

「さて、何を書こうかな?」

僕は、書く気と、発想が途絶えたことに気づく。

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