君を救わない。
りな
第1話 君を救わない
駅のプラットフォーム、熱風の先。
「その格好似合わないよ」
真夏なのに長袖を着ている君に言った。
「日に焼けるのがイヤなんだ。ねぇ知ってる?シミの原因になるんだよ」
外に出るのがイヤなのか、やけに白い肌だね。
「どうして今日は外に?」
「夏だから、人はいつか死ぬ、海は夏しか行けない。わかるよね?」
わけも分からず、電車を乗り継ぎ海を目指す。乗り継ぎの度に暑いと愚痴る君。車窓から不意に見えた濃い青、見るのは目が輝く君の横顔。
「お人好しだね?流されちゃうタイプ?」
「人は必ず死ぬからね……で、どの海岸行く?」
「もうここでいいや。さっき見えたし、もう潮風がベタベタで気持ち悪いし」
「勝手過ぎない?」
「私って最高でしょ?」
駅のベンチで一席空けて、帰りの電車を待つ二人。今は何時だ、ここはどこだ、次いつ会えるんだ?
やけに白い肌の君はもう二度と家から出ない。
強い日差し、沿線のヒマワリ、白くなる。
「……ねぇ、もう二度と会えなくていいから、こっち向いてよ」
僅かに漏れた祈り、君はスマホから目を離す。
君を救わない。 りな @rinasan
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