『俺達のグレートなキャンプ99 ハードボイルドにカレーを作る』
海山純平
第99話 ハードボイルドにカレーを作る
俺達のグレートなキャンプ99 ハードボイルドにカレーを作る
青空が広がる五月の土曜日。山奥のキャンプ場には爽やかな風が吹き抜けている。テントサイトには既に何組かのファミリーや友人グループが陣取り、のんびりとアウトドアライフを満喫していた。
そんな平和な光景に、軽トラックが砂利道をガラガラと音を立てながら現れた。運転席から飛び出してきたのは、日焼けした顔に野球帽を深くかぶった男——石川だ。
「よっしゃあ!!今日も最高のキャンプ日和だぜ!」
石川は両手を天高く上げ、山々にこだまする大声で雄叫びを上げる。隣の助手席から降りてきた千葉は、目をキラキラと輝かせながら辺りを見回している。
「うわあ、今日のキャンプ場も素敵ですね!石川さん、今回はどんなグレートなキャンプをするんですか?」
千葉の無邪気な質問に、石川はニヤリと口の端を上げる。その表情には何か企んでいる気配がありありと浮かんでいる。
「ふふふ...千葉よ、今回のキャンプは一味違うぜ。今までで一番グレートで、一番奇抜で、一番——」
「また始まった...」
軽トラックの荷台から重いリュックを降ろしながら、富山が深いため息をつく。彼女の表情には既に疲労の色が濃く浮かんでいる。石川の「グレートなキャンプ」がどれほど突飛なものか、長年の経験で痛いほど分かっているのだ。目を細めて石川を見つめる富山の視線は、まるで「またこの人は何をやらかすつもりなの...」と語っているかのようだった。
「おい富山!なんだその冷めた目は!今回のキャンプは絶対に盛り上がるって!」
「はいはい。で、今度は何をするつもりなの?まさかまた前回みたいに『宇宙人交信キャンプ』とか言って、夜中じゅう電波望遠鏡作るとかじゃないでしょうね?」
富山の鋭いツッコミに、石川は胸を張って答える。サングラスをかけ直し、まるで映画のワンシーンのように決めポーズを取る。
「甘いな!今回はもっとスタイリッシュだ!その名も...」
風が彼の野球帽を揺らし、逆光が彼の輪郭を際立たせる。しかし富山は完全に醒めた目で見つめている。
「『ハードボイルドにカレーを作る』キャンプだ!!」
「...はあ?」
富山の顔が完全に困惑と呆れの混じった表情に変わる。眉間にしわを寄せ、口をへの字に曲げている。一方、千葉は相変わらず目をキラキラさせながら、
「ハードボイルド!かっこいいですね!でも...ハードボイルドにカレーを作るって、具体的にはどういう...?」
「いい質問だ千葉!」
石川は軽トラックの荷台から、やたらと重厚な黒いアタッシュケースを取り出す。そのケースには「HARDCORE CURRY EQUIPMENT」という手作りのステッカーが貼られているが、よく見ると「HARDCORE」のスペルが「HARDKOA」になっている。
「要するに、カレーを作る全ての工程を、ハードボイルド小説の主人公みたいにクールにキメるんだ!探偵のように、ガンマンのように、そして孤高の男のように!」
「孤高って...三人いるじゃない」
富山の冷静な指摘に、石川は一瞬たじろぐ。
「え...あ...そうだな...じゃあ孤高の男とその相棒たちということで...」
「相棒って...」
富山がため息をつく間に、千葉が興奮して手を上げる。
「僕、相棒になります!石川さんの相棒!」
「よし!じゃあ富山は...えーと...」
「何よ」
富山の低い声に、石川は冷や汗をかきながら答える。
「情報屋...?」
「情報屋って何の情報よ」
富山の冷めた視線が石川を貫く。その目は完全に「この人バカなの?」と語っている。
石川は慌ててアタッシュケースを開く。中には普通のカレー用具一式が入っているが、なぜか全て黒に塗装されている。しかも塗装が雑で、あちこち剥げている。
「見ろ、これが俺の相棒たちだ...黒の包丁『ダークスライサー』、黒のまな板『シャドウボード』、そして黒の鍋『ブラックコルドロン』...」
「全部黒いだけじゃない...しかも塗装が剥げてるし」
富山の容赦ない指摘に、石川は焦る。
「いや、これはワビサビというか...使い込んだ感じが出てて...」
「昨日スプレーで塗ったでしょ」
「...バレた?」
「バレバレよ。手に黒いペンキついてるし」
石川が慌てて手を隠すが、確かに指先が黒い。千葉は純粋な目で、
「でもかっこいいですね!僕も何か黒いのありますか?」
「もちろんだ。千葉、君には『シャドウピーラー』を任せよう」
渡されたのは黒く塗られたピーラーだった。よく見ると「100円ショップ」のシールが黒いペンキの下からうっすら見えている。千葉は宝物でも受け取ったかのように大事そうに両手で受け取る。
「わあ、僕専用の武器ですね!」
「武器って...野菜の皮むくだけよ...」
富山の冷静なツッコミも空しく、石川は野菜の入った袋を前に急に低い声になる。
「さあ、始めるぜ...この勝負、俺の負けはない...」
「何と勝負してるのよ」
富山が呆れたように呟く中、石川はじゃがいもを一つ手に取る。
「ほう...」
石川はじゃがいもを手のひらに載せ、まじまじと見つめる。
「このじゃがいも...いい面構えだ」
「面構えって...じゃがいもに顔ないでしょ」
富山の冷めた指摘を無視して、石川はじゃがいもと見つめ合う。
「見ろよ千葉。このごつごつした表面...まるで人生の苦労を背負った男の顔のようじゃないか」
「うわあ、本当ですね!なんかダンディーです!」
千葉の感動に、富山は頭を抱える。
「あなたたち、じゃがいもをダンディーって...」
石川は黒い包丁『ダークスライサー』を構える。
「すまないな、相棒...だが俺にも事情があるんだ」
そう言ってじゃがいもに刃を向けるが、なぜかスローモーション。しかも変な効果音を口で言っている。
「ザシュ...ザシュ...」
「自分で効果音言わないで!」
富山の絶叫が山々にこだまする。一方、隣のテントサイトでコーヒーを飲んでいた中年夫婦がこちらを振り返る。
「あのう...大丈夫ですか?」と夫婦の旦那さんが心配そうに声をかける。
石川は振り返ると、サングラス越しに中年夫婦を見つめる。
「心配は無用だ。俺は...ただカレーを作ってるだけさ」
「いや、でも効果音とか聞こえてきて...」
「それは...風の音だ」
「どう考えても人の声でしたけど...」
中年夫婦が困惑している間に、石川は次の野菜、玉ねぎを手に取る。
「さて、次はお前だ...涙の女王よ」
玉ねぎを前に、石川は決意を固めたような表情を作る。
「俺は泣かない。ハードボイルドは泣かないんだ」
そう宣言して玉ねぎを切り始める石川。しかし当然のように涙がボロボロ流れてくる。
「うぐっ...うぐぐっ...」
涙を流しながらも、石川は玉ねぎに向かって語りかける。
「切られてなお抗うか...いい根性だ...」
「涙流しながら何言ってるのよ!」
富山の突っ込みをよそに、石川の涙はとまらない。しかし彼は必死に涙を拭いながら強がる。
「これは...涙じゃない...目から出る戦士の汗だ...」
「無理があるでしょそれ!しかも鼻水も出てるじゃない!」
「鼻水は...鼻から出る戦士の汗だ」
「それはもっと無理がある!」
富山の突っ込みに、千葉も人参をピーラーで削りながら、
「僕も戦士の汗が...あ、これは本当に汗ですね。緊張して手に汗かいてます」
「千葉君は正直でよろしい」
富山が安心したのも束の間、石川が突然玉ねぎに向かって敬礼する。
「よく戦った...安らかに眠れ」
「玉ねぎの葬式やらないで!」
そんな騒動の中、人参の皮を削り終えた千葉が振り返る。
「石川さん、僕も人参に何か言った方がいいですか?」
「そうだな...人参は情熱の野菜だ。何か熱い言葉をかけてやってくれ」
千葉は真剣な表情で人参と向き合う。
「人参よ...君のオレンジ色は、まるで夕日のように美しい...」
「それは素敵ね」
富山が思わず感心する中、千葉は続ける。
「だから...だから君を食べて、僕も夕日のように美しくなりたい!」
「意味わからない!」
富山の突っ込みに、千葉はキョトンとする。
「あれ?変でした?」
「変よ!人参食べても夕日みたいにならないから!」
石川が涙を拭きながら千葉を褒める。
「いいぞ千葉!その純粋さがハードボイルドだ!」
「純粋さはハードボイルドじゃないでしょ!」
富山の絶叫が再び山々にこだまする。
野菜カットが終わると、次は炒める工程だ。石川は黒い鍋『ブラックコルドロン』にサラダ油を注ぐ。しかしその動作もやけに大げさで、まるで聖水でも注いでいるかのようだ。
「見よ...黄金の雫が闇の器に注がれていく...」
「ただのサラダ油でしょ」
富山の冷めた指摘に、石川は首を振る。
「違う。これは希望の油だ」
「希望って...」
富山がため息をついている間に、石川はコンロに火をつける。その瞬間、なぜか風が吹いて彼の野球帽が飛ばされる。
「あっ!俺の帽子!」
慌てて帽子を追いかける石川の姿は、ハードボイルドとは程遠い。必死に走り回って帽子をキャッチする姿を見て、富山が冷めた目で呟く。
「ハードボイルドは帽子追いかけて『わー』って言いながら走り回らない」
「うるさい!風が悪いんだ!」
帽子を拾いながら、石川は苦しい言い訳をする。
「これも...試練の一つだったんだ」
「後付けの理由!」
気を取り直して肉を炒め始める石川。今度はフライパンを振る動作も、なぜか決めポーズ付き。
「踊れ...俺のパートナーよ...」
ジュージューと音を立てて炒められる肉を見て、石川は満足そうにうなずく。
「いい音だ...まるで雨に打たれる屋根のような...いや、戦場を駆ける馬の蹄のような...」
「どっちよ」
富山の冷めた突っ込みに、石川は焦る。
「え...両方だ!雨に打たれながら戦場を駆ける馬の蹄のような音だ!」
「無理矢理すぎる!」
そんな時、キャンプ場に新しい家族が到着した。小学生くらいの男の子と女の子を連れた若い夫婦だ。子供たちは石川たちの不思議な光景に興味深そうに近づいてくる。
「おじちゃんたち、何してるの?」と男の子が無邪気に聞く。
石川は振り返ると、サングラスを外して子供たちに微笑む。しかし微笑み方もハードボイルドを意識してやけに渋い。
「カレーを作ってるんだ、坊主...でも普通のカレーじゃない...」
「普通じゃないカレー?」
女の子の質問に、石川は立ち上がって胸を張る。
「ハードボイルドカレーだ」
「ハードボイルド?」
子供たちが首をかしげる中、千葉が説明しようとする。
「えーっと...かっこよくカレーを作ることかな?石川さんが野菜と会話したり...」
「会話?」
興味を持った子供たちに、富山が小声で説明する。
「あのお兄ちゃんはちょっと変わった人なの。でも悪い人じゃないから安心して」
富山の「変わった人」発言に、石川は少し傷ついた表情を見せるが、すぐにハードボイルドモードに戻る。
「変わった...それもまた男の生き様よ...」
「だから無理矢理ハードボイルドっぽく言わないで」
野菜を投入する段階で、石川は一つ一つに丁寧に語りかける。
「玉ねぎよ...お前との激しい戦いは終わった...今度は俺のパートナーになってくれ」
「パートナーって食べるんでしょ」
富山の冷めた指摘に、石川は「それもまた愛だ」と意味不明な返答をする。
「人参よ...お前の情熱を俺に分けてくれ...俺の心も夕日のように燃え上がらせてくれ」
「千葉君の受け売りじゃない」
「じゃがいもよ...お前の面構えに惚れた...俺と一緒に来てくれ」
「プロポーズみたいになってる!」
富山の突っ込みを無視して、石川は水を加える。その動作もやけに儀式めいている。
「聖なる水よ...全てを一つにしてくれ...」
「水道水でしょそれ」
煮込み段階に入ると、石川は鍋の前で腕を組み、じっと見つめ続ける。
「さあ、静寂の時間だ...俺たちにできるのは待つことだけ...まるで獲物を狙う狼のように...」
「狼は獲物狙う時じっとしてるの?」
富山の疑問に、石川は慌てる。
「え...そうだろう?狼は...」
「狼は普通に動き回って狩りするでしょ」
「じゃあ...張り込み中の刑事のように」
「それはさっきも言った」
石川の苦しい言い訳を見て、富山はため息をつく。その表情は完全に「この人もう何も思い浮かばないのね」と語っている。
千葉も石川の真似をして鍋を見つめているが、途中で飽きてしまう。
「石川さん、ずっと見てるの疲れませんか?」
「疲れる?ハードボイルドに疲れるという概念はない」
そう言いながら石川は明らかに疲れた表情を見せている。目が少し霞んでいるし、肩も下がっている。
「でも石川さん、ちょっと疲れてません?」
千葉の純粋な指摘に、石川は慌てて姿勢を正す。
「疲れてない!俺は...俺は全然疲れてない!」
「無理しなくていいのよ」
富山が呆れたように言うと、石川はサングラスを外して目を擦る。
「...ちょっと目が乾いた」
「素直でよろしい」
ルーを投入する段階で、石川は再びハードボイルドモードに戻る。カレールーの箱を手に取り、まるで重要な書類でも扱うかのように慎重に開封する。
「これが...最後の審判だ...」
ルーを一つずつ鍋に投入していく石川。その動作は異様に丁寧で、まるで爆弾処理でもしているかのようだ。
「一つ...二つ...三つ...」
「数えなくていいから」
富山の指摘を無視して、石川は最後のルーを投入する。
「これで...運命が決まる...」
ルーが溶けていく様子を、石川は息を殺して見つめる。しかし途中でかき混ぜるのを忘れていることに気づく。
「あっ!混ぜるの忘れた!」
慌ててお玉でかき混ぜ始める石川。その慌てふためく姿に、富山は呆れ果てる。
「ハードボイルドは慌てない」
「うるさい!緊急事態だ!」
必死にかき混ぜながら、石川は汗だくになっている。サングラスも曇ってしまい、前がよく見えない。
「石川さん、サングラス曇ってますよ」
千葉の指摘に、石川はサングラスを外してレンズを拭く。
「これは...戦いの証だ」
「汗で曇っただけでしょ」
富山の冷めた指摘に、石川は「それも戦いの汗だ」と言い張る。
完成したカレーの味見をする段階で、石川は木のスプーンを手に取る。
「さあ、運命の瞬間だ...このスプーン一杯に、俺の全てがかかっている...」
スプーンをカレーに入れ、ゆっくりと口に運ぶ石川。その動作は異様にスローで、まるでコマ送りの映像を見ているかのようだ。
「石川さん、普通に食べていいですよ」
千葉の優しい声かけに、石川は「これがハードボイルドの味わい方だ」と返す。
「...」
石川は目を閉じて味を確かめる。そして、ゆっくりと目を開く。
「これは...」
「どうですか石川さん!?」
千葉が身を乗り出す中、石川は深くうなずく。
「完璧だ...いや、完璧を超えた何かだ...」
「普通においしいってことね」
富山の翻訳に、石川は少し不満そうな表情を見せる。
「普通じゃない。これはハードボイルドカレーだ」
三人でカレーを食べ始める。石川は一口食べる度に、
「うむ...じゃがいもの面構えが活かされている...」
「玉ねぎの根性が伝わってくる...」
「人参の情熱が口の中で踊っている...」
などと感想を述べる。富山は呆れながらも、
「味は普通においしいわね」
と認める。千葉は素直に、
「本当においしいです!石川さんのハードボイルド、すごいですね!」
と喜んでいる。
食後、石川はコーヒーを淹れ始める。もちろんこれもハードボイルド風に。
「さあ、最後の儀式だ...」
コーヒー豆を手に取り、まじまじと見つめる石川。
「この黒い粒一つ一つに、大地の記憶が刻まれている...」
「コーヒー豆でそこまで語る?」
富山の呆れた声を無視して、石川はコーヒーミルを回し始める。ガリガリという音に合わせて、なぜか効果音を口にする。
「ガリガリ...ガリガリ...まるで時の歯車のようだ...」
「また自分で効果音言ってる」
お湯を沸かす間も、石川はやかんを見つめ続ける。
「沸騰...それは水の魂が解放される瞬間...」
湯気が立ち上がるのを見て、石川は感慨深げにうなずく。
「見ろ...魂が天に昇っていく...」
「湯気よ湯気」
富山の冷めた指摘も空しく、石川はコーヒーを淹れ始める。お湯をドリッパーに注ぐ動作も、やけに大げさだ。
「静かに...静かに...まるで恋人に語りかけるように...」
「恋人には語りかけないでしょそれ」
コーヒーが出来上がると、石川は三つのカップに注ぐ。もちろんこれも儀式めいている。
「この黒い液体に、俺たちの友情を注ごう...」
「友情は注げない」
完成したコーヒーを手に、石川は深く香りを吸い込む。
「ああ...この香り...まるで記憶の扉を開くようだ...」
一口飲んで、石川は満足そうに息を吐く。
「苦味の向こうに見える甘さ...それが人生だ...」
「コーヒー飲んでるだけでしょ」
富山の突っ込みに、石川は首を振る。
「違う。俺は今、人生を飲んでいるんだ」
「意味わからない」
そんな石川の姿を見て、千葉が感動している。
「石川さん、コーヒーの飲み方もハードボイルドなんですね!」
「そうだ千葉。全てをハードボイルドに生きる...それが俺のポリシーだ」
「でも石川さん、さっき帽子追いかけて走り回ってましたよね?」
千葉の純粋な質問に、石川は一瞬固まる。
「あれは...あれは風との戦いだったんだ」
「風と戦うって...」
富山が呆れている間に、夕日が山の向こうに沈み始める。オレンジ色の光がキャンプ場を照らし、なんとも美しい光景が広がる。
石川はその夕日を見つめながら、コーヒーカップを片手に立ち上がる。
「見ろ...太陽が地平線に沈んでいく...まるで戦いを終えた戦士のようだ...」
「夕日は戦士じゃない」
富山の突っ込みも、もはや慣れたものだ。しかし不思議なことに、石川のハードボイルドごっこを見ているうちに、彼女の表情も少し柔らかくなっていた。
「でも...」
富山が小さくつぶやく。
「何?」
石川が振り返ると、富山は少し恥ずかしそうに言う。
「まあ...いつものことだけど、あなたのおかげで退屈はしないわね」
「お!富山がついに俺のハードボイルドを理解してくれたか!」
「理解はしてない。慣れただけよ」
「慣れも愛のうちだ」
「勝手に愛にしないで」
そんなやり取りを見て、千葉が嬉しそうに言う。
「やっぱり、どんなキャンプも一緒にやれば楽しくなりますね!」
三人でコーヒーを飲みながら夕日を眺める。石川は相変わらずハードボイルドっぽいことを呟き、富山は相変わらず冷めた目で見つめ、千葉は相変わらず素直に楽しんでいる。
「次回のキャンプは何をするんですか?」
千葉の質問に、石川はニヤリと笑う。
「実は...『ロマンチックに焚き火をする』っていうのを考えてるんだ」
「ロマンチックって...」
富山の顔が再び困惑の表情に戻る。しかし今度は、どこか楽しみにしているような表情も混じっていた。
「まあ、石川さんなら何をしても面白そうですね!」
千葉の前向きな言葉に、石川は胸を張る。
「そうだろう!俺たちの冒険はまだまだ続くぜ!」
「冒険って...普通にキャンプしてるだけでしょ」
富山の冷めた指摘も、もはや愛情に聞こえてくる。
「よっしゃ!じゃあ次回も『俺達のグレートなキャンプ』だな!」
「おー!」
完
『俺達のグレートなキャンプ99 ハードボイルドにカレーを作る』 海山純平 @umiyama117
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