Ep.4-3【放課後カフェ】

(全知発動──)



二人は目を見開く。


「またか。」


「出たねぇ!いつもの虹色のエネルギー」


虹色のエネルギーとはなんの事だろう。

おそらく、能力のエネルギーには特性ごとの色があるのだろう。


浅島あさしま七海ななみ永山ながやま溶真ようまについて、全知が入手できる情報を全て教えてくれ)


『───その二人についての情報は検出できません。』


「やっぱり……」


僕はうつむきながら、ため息を吐く。


「僕の全知の力は、能力や能力者に関する情報は得られないみたいです。

だから二人は非能力者だと勘違かんちがいしてました。」


「あ、そうだったの?だからかたくなに勧誘を断ってたのかぁ……。


そうだ、忘れてた、仲間になってよ!

君の能力があれば、一般人相手なら記憶を消したりもできるでしょ?そしたら平和活動ができるようになるよぉ!」


僕は再び天井に視線を向け、じっくりと考える。

視線を天井に向けたままで答える。


「僕は、大丈夫です。見知らぬ人をわざわざ助けるほどの正義感は持ち合わせてません。」


「そうなんだぁ……じゃあさ、君はその能力ちからで何がしたい?何を手に入れたい?何を守りたい?」


七海先輩のお調子者な態度は見る影もなく、真剣な表情へと変わった。


僕はすぐさま天井から視線を落とし、七海先輩のオレンジ色の瞳を見る。

溶真と対峙たいじした時とはまた違う緊張が走り、僕はゴクンとつばを飲み込む。


「僕は……妹を守りたい。そのためならになってもいいと思ってます。」


「……そっかぁ。優しいお兄ちゃんだね」


「あとちょっとラクしたいです。」


「て、おいィー、アタシの感動を返せぇ!」


緊張の張りつめた空気は、一瞬で穏やかな日常へと戻る。


笑いながら、僕はテーブルの上に置いていたスマホを手に取る。

スマホのバッテリーが十三パーセントしかないことに気がつく。


「【全能発動:電撃】」


僕の手を通してスマホにビリビリと電流が流れる。

僕のスマホのバッテリーが百パーセントに上昇する。


「本当に楽してるしぃ」


「アホだな。」


七海先輩と溶真が、呆れたと言わんばかりの表情で僕を見る。


「誰がアホだよ!」


僕はムッとしながら頼んだ紅茶を飲み干し、テーブルから立ち上がる。

スマホをズボンのポケットにしまい、スクールバッグを肩にかける。


「あれぇ?もう帰っちゃうのぉ?」


「そろそろ妹がご飯を作り始める時間なんで」


「人助けがしたくなったら、いつでも俺に声をかけろ。」


溶真が顔に合わないセリフを吐く。

俺は「了解」と相槌あいづちを打ってカフェを出る。


「──あぁ!ジュース奢ってもらうの忘れてたぁ!」


「しかもカフェここの代金も置かずに行ったぞ。」


僕は二人の愚痴に気づいていたが、あえて知らんぷりをしてそのままカフェを後にした。

そして僕の顔は、これでもかと言うほどにニマニマしている。



「全知全能とは……面白いね……」


カフェでコーヒーを飲んでいる金髪の男がそう呟いた。

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能力頼りの万能者 うさぎめい @usagimei

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