GOD
三八式物書機
第1話 突然変異
街の片隅。
無造作に置かれた生ごみ。
集るのは蠅やゴキブリ、ネズミに野良猫、野良犬。
彼らは人間が排せつする生ごみに依存していた。
人間は蠅やゴキブリは害虫として、駆除をしようとする。
殺虫剤は大抵、彼らの命を奪った。
だが、それでも彼らは抵抗力を持ち、繁殖を続け、生き残った。
強い生命力、高い繁殖力、何でも食べる悪食。
それでも所詮は昆虫。人間に駆除される以外にも野生生物に捕食される運命。
だが、街の片隅で生まれたたった一匹のゴキブリが全てを変えた。
それは突然変異であった。
殺虫剤を浴びても効かぬ身体。
肉を切り裂く強い顎。
それは圧倒的な性能を有した個体だった。
進化とも言える個体は群れの中においても圧倒的に秀でており、彼はアルファとして、彼の遺伝子を継ぐ個体を繁殖していった。
最初に異変が起きたのは街から野良猫やカラスが減った事だった。
放置された生ごみも消えた。
だが、その異変に気付けた人間は皆無だった。
ホームレスの男性は野良猫の死骸にゴキブリが集っているを見た。
ゴキブリに集られた野良猫の死骸は一日も立たずに毛すら残らずに消えた。
やがて、ホームレスは自らの寝床にもゴキブリが徘徊するのを見た。
別に珍しい事では無かった。
奴らは少しでも生ごみがあれば、すぐに現れる。
そう思っていた。
だが、彼は驚いた。
寝ている時に痛みを感じて、目を醒ます。
すると彼の手に一匹のゴキブリが居た。
驚いて、手を払うも噛み付いたゴキブリは離れない。
激痛だった。
ゴキブリに皮膚を裂かれ、肉を食われている。
血が流れ出していた。
男性は慌てて、近くにあったペットボトルでゴキブリを叩き潰す。
ゴキブリは見事に潰れて、その場に転がり落ちる。
助かったと思った男性だが、次の瞬間、背中に激痛が走った。
彼は叫び声を上げて、その場に転げ回る。
背中にもゴキブリが居たのだ。
何とか転げ回ると背中の痛みも消えた。
だが、安堵するには早かった。次々と身体中に痛みが走る。
男性が周囲を見渡すと黒い物が蠢いていた。
彼の身体に黒い蠢きが襲い掛かった。
それはゴキブリの集団だった。
無数のゴキブリの脚が男性の体を駆け上がる。
痛みとも違うガサガサとした感覚に男性に悪寒が走る。
そして、全身を噛み千切られる激痛が走った。
男性は暴れ周り、転がる事で多くのゴキブリが潰れて死ぬも、それを超える数が男性を包み込む。
やがて、口の中にも鼻の穴にも、耳の穴にも奴らは入り込み、体内を噛み切る。
服も食われ、尻の穴にも奴らは入り込む。
やがて、暴れ回る男性も力尽き、彼は喉を破られ、息が出来ずに窒息した。
死んだ彼はゴキブリたちの餌となり、朝までに骨だけとなっていた。
それでゴキブリの貪欲な食欲が尽きるわけがなく、奴らは更なる獲物を求めて、蠢き出した。
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