夢の国

@itsakayama_pi

第1話

みんなは寝ている時、夢を見ているだろうか。

世の中には実にさまざまな夢がある。予知夢、明晰夢、悪夢……。

ある人にとっては幸福の時間であり、またある人にとっては恐怖そのもの。

では、君にとって「幸せな夢」とはどんなものだろうか。


〜2XXX年〜

「おやすみー!」

結人(ゆいと)は意気揚々と自分の部屋へ戻り、ベッドに飛び込むと枕の電源を入れた。


「相変わらず、すごい発明だな……」

そう呟いた瞬間、彼の意識は夢の世界へと溶け込んでいった。


2XXX年、世界は新たなバーチャル領域として「夢」に注目した。

人によって夢の内容は異なるが、脳の周波数を同期させれば――人々の夢を繋げ、同じ世界を共有できるのではないか。

その集大成が、この〈ドリーム・リンク枕〉だった。


人間の想像力が描き出す「夢の国」は、まさに無限の可能性を秘めている。

しかもこの枕は、眠りによる疲労回復を妨げずに夢の活動を可能にするという画期的な代物だ。

かつて慢性的な睡眠不足に悩まされていた日本でも、この枕の普及によって全国平均睡眠時間は8時間を超えたという。


「さて、今日は何をしようかな」

結人は夢の中で空を見上げながらつぶやいた。


夢の国では、移動の手段さえも自由自在だ。

空を飛ぶ者、乗り物を創り出す者、テレポートする者……まるでヒーローのように糸で飛び移る者もいる。

結人はお気に入りのスケボーを取り出した。


「やっぱ、これが一番気持ちいい」

地面を蹴ると、そのまま空へと舞い上がっていく。


そんな中、ポケットから取り出した〈ドリフォン〉が光った。

[みんな寝てるー?]

[お!結人!やっと来たか!]

[ごめんごめん、宿題で遅れちゃった!]


画面に映るのは親友の透(とおる)だった。

[今行くから待ってて!]


笑いながら結人は返信し、スケボーをさらに加速させる。


――だが、この楽園にはまだ知られていない「裏の顔」があった。

誰もが無邪気に楽しむ夢の国。その影で、ある組織が人々の夢を密かに収集し、未来を予測しようとしていることを、結人はまだ知らなかった……。

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