チェックメイトはバニラ味

夕日ゆうや

チェックメイトはバニラ味

「ねぇ。俊之としゆき、ゲームしよ?」

「ああ。いいぜ」

 ゲームと聞いたら負けるわけにはいかない。

 一香いちかはゲームを甘く見ているに違いない。

 ならこのゲーム、俺の勝ちだな。

「何笑っているのさ」

「ふっ。想像したら、な……」

「言っておくけど、お互いに手加減はなしだからね?」

 一香は人差し指をこちらに向けてくる。

「ほう。それでいいのか?」

 この俺を誰だと思っている。

「あと、負けた人は罰ゲームね」

 そう言いながらアイスを頬張る俺たち。

 夏の暑さから逃げるように家に閉じこもり、ガンガンに冷房を効かせている。

 そんな中で食べるアイスは最高の贅沢だと思う。

 さらにはそこに幼馴染みの女子とゲーム。

 この状況に俺は最高の時間だと感じていた。

「罰ゲームね……」

 あまり過激じゃない方がいいな。

 照れ臭くなるような台詞でも言わせるか。

「ああ。いいぜ。やろう罰ゲーム」

「ふふ。男に二言はないね」

「わかっている。じゃあなんのゲームにするんだ?」

「マ〇オカート」

「くくく。いいだろう。好きなだけやるがいい」


 ※※※


「これでチェックメイトだよ」

「ま、負けた、だと……」

 俺は両手を床につき、果てしない負けコールの中、項垂れた。

「……罰ゲームは?」

「うん。今からするよ」

 項垂れた俺の頬に触れ持ち上げる一香。

「さ。やるよ」

 一香の顔がゆっくりと近づいてくる。

「え?」

 俺は戸惑っていると、一香は俺の唇に唇を重ねる。

 ただの軽いキスではない。

 舌が口の中で暴れ回る。

 蹂躙され、なめ回され、なんともいえない時間が過ぎていく。

 幼馴染み。

 それ以外の関係性が見当たらない一香との接吻。それもディープキス。

 離れると、銀糸が途切れる。

「てめー! なにすんだよ!?」

「ふふ。ファーストキスチェックメイトはバニラ味だったよ」

 先ほど食べたアイスの味を言い当てて嬉しそうにする一香。

 チェックメイトはバニラの味。

 その言葉にドキドキしてしまう俺。

 なんでこんなに心臓がうるさいんだ。

 ただの一香おさななじみじゃないか。

「また、しようね♡」

 そう言って逃げるようにバタバタと立ち去る一香。

 俺は戸惑ってその場でぼーっとするしかなかった。

 最後まで一香の頬が朱色に染まっていることには気がつかなかった。

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