6日目 神社

街外れの小道を歩いていると、朱色の鳥居が現れた。


 参道には砂利が敷かれ、風に揺れる鈴の音が遠くから聞こえる。

 ピミイは足を止め、耳をぴくぴくさせた。

 静かで、でもどこか落ち着く匂い。森の空気に少し似ている。


 境内に入ると、祭りの準備をしている人たちがいた。

 屋台の設営、飾り付け、太鼓の位置確認。

 その中の一人が、ピミイを見て小さく笑った。


「おや、手伝ってくれるか?」


 言葉は理解できない。

 だが、指示の意味は体でわかる。

 ピミイはふらりと二本足で歩き、竹の棒や小さな飾りを運ぶ。

 子どもたちが飾りを吊るすのを手伝い、倒れそうな屋台を支えた。


 太鼓の前に立つと、そっと両手で小さな枠を押す。

 音は出ないけれど、設置の手伝いは完璧だ。

 作業員たちは驚きながらも笑った。


 昼が過ぎ、参拝客が増えてくる。

 ピミイは屋台の横で、無言のまま見守る。

 人々が楽しむ顔、子どもたちの笑い声。

 森とは違う喧騒だが、悪くはない。


 夕暮れになると、灯篭がともされ、境内は金色に輝く。

 ピミイは肩に軽く触れられ、祭りの一部として受け入れられたことを感じた。


 やがて、祭りの音が遠くなる時間。

 ピミイはまた歩き出す。

 朱色の鳥居をくぐり、街の明かりの方へ。


 胸には、今日手伝った小さな飾りと、森の思い出。


 そして、まだ見ぬ次の街への期待があった。

 ――放浪は、続く。

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