HEY HEY 屁意

ネオばた

第1話

家族と些細な事で喧嘩をして、夜の街を飛び出した。


とは言っても行く宛も無し。

車の中で籠城するのもなんだからと思い、車をぶっ飛ばしてあるネカフェへ。


そこは女性専用エリアもあり、時折利用するネカフェである。

まだ時間も早目だからかそのエリアには私しか居ない様だ。

ここ最近は電子コミックに傾倒していたので、ページをめくりながら漫画を読むのも楽しい。


そんな中、突然私の大腸が小刻みにリズムを刻み出した。

急激な尿意、ならぬ屁意(こんな言葉があるのだろうか)に襲われようとしている。

しかも経験上これは音無しでやり過ごせる様な上品な代物ではない。


ここに入る前、空腹の為とあるガッツリ丼チェーン店にて大盛りニンニク増しの、およそ初老の女にはカロリー過剰な食事を終えていた所であったのだ。


その余計な栄養分は放屁として身体から放出しようとしている。


尻はもう既に限界で、クラウチングスタートの音を奏で出した。

その時突然、


「BOBOBOBOOOOOOO〜〜NNN!!!!」


我が意志とは関係なく、尻が噴煙を吹き出した。


しまった、終わった…


冷や汗をかきながらそう思ったが、ふと考えたらここは今私1人である。

言わば私が法律なのだから屁くらいはこき放題(※偏りすぎたダメ人間の思考です)、更に屁意は第二波、第三波として襲って来ようとする。


ここから先は花火大会のスターマインの如く、よく大腸からこの様な音が出るものだと感心しながら都合8発の花火を打ち終えた。


ひと仕事やり終えた私は、鼻歌を歌いながらドアを開けて


「あ〜スッキリし……た…」


そう、誰も居ない筈がこのネカフェは一部工事中で、いつの間にか職人さん達が入っていたのである。


私とバッチリ目が合ってしまった彼等は慌てて背を向けて、小刻みに震え出したのである。


再び冷や汗が背中を伝い、静かにドアを閉めた。


年をとっても一応女である。

かかなくてもいい恥をかきまくった自責の念から、出るに出られなくなってしまった。


そうこうしてる間に、先程の花火に誘発された為か今度は尿意が襲って来た為恥を忍んでドアを開けてトイレへ行こうとしたら、なんとここが工事中!!


ラマーズ法の呼吸でやり過ごそうとしても、やはり身体はもう限界を迎えようとしている。


なるべく身体に振動を与えない様に、これ以上ない位内股で近くのコンビニへ。


「トイレをご利用の方はひと声おかけ下さい」


の張り紙に、目を白黒させてもはや半泣きで


「す、すみません…ドイレ…かじて…」


即座にヤバいと思ったのかスタッフさんは秒で「どうぞ!」のアンサーを下さった。


こうして辛うじて人間としての尊厳は保たれた。

(いやもう既に人として大事な何かを失っているのだが…)


ちなみにケンカの原因は、相方がいつも飲んでいるアイスコーヒーのボトルに私が麺つゆを詰め替えて、それを飲んで苦悶している相方を大笑いしていたら娘達にママ鬼畜!と言われた為である。


人を笑い者にしたら巡り巡って自分も笑い者になると身を持って知った訳であるが、個室での人間スターマインも結構楽しかったと思うのはやはり懲りていないからなのだろうか。






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HEY HEY 屁意 ネオばた @nazu1999

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