第1章エピローグ『迫る影』

 辺境の砦は修復が始まり、兵士たちの笑い声と歓声が響いていた。

「ユウト様、乾杯だ!」

「勇者様ばんざい!」

「いやいやいや! 鍋蓋だってば!」

 俺が必死に否定しても、皆は耳を貸さず、宴の酒を酌み交わしてくる。


 アリシアは静かに盃を置き、月を見上げた。

「……この勝利で、魔王軍が黙っているはずがない」

 その声には不安と決意が混じっていた。


 リオルが手元の水晶板を叩きながら呟く。

「敵幹部が単独で辺境を襲撃してきた……統計的に見ても不自然だ。大規模侵攻の前触れと考えるのが妥当だな」


 ミリアも頷く。

「わたしたち、ここからが本当の戦いなんですね」


 夜空には、ひときわ大きな赤い星が瞬いていた。

まるで不吉な兆しのように。


 遠く離れた黒き城砦。

闇の玉座に座る影が、冷たく笑う。

「……鍋蓋の勇者か。興が乗る」

 背後で蠢く軍勢の気配。世界を覆う戦乱の予兆。


 こうして俺の「鍋蓋勇者譚」は始まったばかりだった。

(俺、またなんかやっちゃうんだろうな……!)

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異世界召喚されたけど生活スキルしかない俺 なぜか伝説になってました 若葉 葵 @Aoi_Wakaba

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