破滅するモブ貴族に転生した俺は、嫁いできた悪役令嬢を必ず幸せにする〜俺たちの破滅を回避するために外れスキル【超回復】を過剰な努力で鍛え抜いたら、最強のぶっ壊れ性能と化していた件

こはるんるん

第1話。外れスキル【超回復】を得る

 今日は、俺たちが待ちに待った俺ことゼノン・グレイヴァンの15歳の誕生日にして、【スキル授与式】だった。


 王国を守る盾として、戦いに明け暮れているグレイヴァン辺境伯家の主立った武将たちが、神殿に勢揃いしていた。


 みんな異様な熱気を込めて、俺に注目している。


「若もようやくこれで一人前。我らはどれだけこの日を待ち望んだことか!」

「共に戦場を駆け抜け、帝国軍のクソ共に目に物見せてやりましょう!」

「もう1人の【剣聖】の誕生だ。うぉおおおおおッ! ゼノン様、万歳ぃいッ!」


 いかつい男たちが、武器をかざして雄叫びを上げた。

 俺は期待と不安で、胸がドキドキするのを抑え切れなかった。


 この世界では15歳になると、神様から特別な能力であるスキルを授けられる。これによって一人前の人間だと認められた。


 スキルには、戦闘系、魔法系、生産系といった3つのタイプがあった。

 戦闘系スキルは人間の身体能力や攻撃力をアップさせ、魔法系スキルは魔力を高めたり、特殊な魔法が使えるようになる効果がある。


 戦闘系スキルの中でも最高峰とされる剣聖のスキルを得た者は、剣の攻撃力が超人的に高まり、城壁をも断つような斬撃を放つことができるようになった。


 俺の父、グレイヴァン辺境伯バルドは剣聖のスキルを得て以来、20年以上、戦場で負け知らずだった。王国随一の猛将と謳われ、家臣からの尊敬と国王からの信頼を一身に浴びていた。


 だが、敵対するバルザーク帝国が約1年前に、魔導兵器ゴーレムの開発に成功し、戦場に投入するようになってから、戦況は不利に傾き出していた。


 ありていに言うと、帝国との国境を守る俺たちグレイヴァン辺境伯軍は、ボロ負けを繰り返すようになっていた。


 父上がいかに奮闘しても、味方が総崩れとなっては敗走せざるを得ない。すでに領地の三分の一を奪われる事態に陥っていた。


 だからこそ、皆が俺に期待するのだ。新たな剣聖の誕生という、起死回生の奇跡を。


「ハハハハッ、ゼノンよ。心配するでない。お前は、来る日も来る日も剣の修行に励んできた。お前ならまず間違いなく、剣聖のスキルを得られよう!」


 隻眼の大男である父上が、俺の肩を叩いて励ましてくれた。

 どうやら、我知らず、身体が震えてしまっていたらしい。


「もちろんです、父上。俺の望みは、父上を超える剣士になることですから!」

「ハハハハッ! こやつめ、言いよるわ!」


 父上はうれしそうに、俺の頭をくしゃくしゃに撫でた。


 スキルは血筋の他、15年間、どのように生きてきたか? どんな望みを抱いているか? によって、何が得られるかが決定する。


 グレイヴァン辺境伯家は、先祖代々、剣技に関する戦闘系スキルを授かってきた剣の名門一族だ。


 俺はその長男として生まれ、幼い頃から剣の修行に懸命に励んできた。

 だから、俺は必ず剣聖のスキルを得られる筈だ。

 

 ……いや、そうでなければ、ならない。

 そうでなければ、俺たちの敗北は必須。俺は戦場で殺されてしまう!


 なにしろ、あの怪物じみた姉上でさえ、戦いに敗れて死んだんだ。


 半年前、3つ年上の姉上は、いつものように戦から帰ったら俺に稽古をつけてくれると約束して出て行き、帰らぬ人となった。


 姉を失った悲しみもさることながら、どんな強者でも死と隣り合わせなのだという、戦争の理不尽さに衝撃を覚えた。


 故に、俺は死にたくない一身で、より一層、剣の修業に打ち込んだんだ。


 神様、頼むぞ! 俺に最強のスキルを授けてくれ!


「それではスキル授与式を始めます」


 老神官が、おごそかに言って、俺の頭に手を置いた。

 ……うん、なんだ?


 皆が固唾を飲んで見守る中、俺はこの光景を以前から知っているような奇妙な感覚に捕らわれていた。


「天上にて万物を照らす、偉大なる神よ。御身の僕(しもべ)たるこの者に、恩寵を授けたまえ」


 老神官が呪文を唱えると、俺の身体が眩い光に包まれた。

 何か強大な力が、老神官の手の平から、この身に注がれて来るのを感じる。

 

「うぉ……ッ!?」


 思わず歯を食いしばった俺は、驚愕した。

 やはり、俺はこの儀式を知っている。体験している。

 一体、どこで……? と考えた瞬間、閃く単語があった。 


 乙女ゲーム『君と紡ぐ聖なる恋詩』略して『君恋』。


 このスキル授与式は、俺が前世で散々やり込んだ『君恋』のプロローグと同じじゃないか?

 あまりにも突拍子もないことだが、そうとしか思えなかった。

 

 前世で、妹から勧められて、なんとなくやってみたところ、面白すぎてドハマりしたゲーム。休日はまさに寝食を忘れて、何十時間以上もぶっ続けでプレイしたのを思い出した。


 乙女ゲームにも関わらず、戦略シュミレーション要素や戦闘パートが充実していて、男の俺でもやりごたえ十分だったのだ。


 だとしたら、嬉しすぎる。

 好きだったキャラたちに、リアルで会いに行けるじゃないか!? 俺は主人公の聖女アリシアが推しだったんだよな。


 一瞬、儀式中であることも忘れて、俺は歓喜した。


「終わりました……神が、ゼノン・グレイヴァン殿にお与えになったスキルは【超回復】オーバーヒールです」


 老神官の宣言に、会場が水を打ったような静寂に包まれた。


「はぁ……?」


 父上の困惑の声。

 武将たちの顔からも熱気が消え、代わりに「なんだそれは?」「戦闘系スキルではないのか?」という動揺のざわめきが広がっていく。


 俺は戸惑いを覚え、混乱の極致にあった。

 戦闘スキルの中に、【超回復】オーバーヒールなどというモノは無かった。


 グレイヴァン辺境伯家の長男が、戦闘系スキル以外を授かるなんて、長い歴史の中でも皆無じゃないか?


 なにより、超回復オーバーヒールなんていうスキルは、俺のゲーム知識にも無いぞ。一体、どうなっているんだ?


「……それはどのようなスキルなのだ?」


 険しい顔をした父上が、老神官に詰め寄った。


「剣聖に匹敵するような戦闘系スキルで間違いないな?」


 老神官は、一瞬、口籠った後に、意を決して告げた。


「……大変申し上げにくいのですが、神のお告げでは、魔法系スキル。効果は『回復魔法が使えるようになること。回復効果が高まること』です」

「か、回復魔法……?」


 みんなのざわめきが大きくなる。


「なんだ、それは? 聞いたことも無い魔法ではないか……!?」


 父上は愕然とした様子だった。

 俺もあまりのことに言葉を失っていた。


 回復魔法という言葉や概念は、この世界には存在しない。回復魔法は、聖女にだけ許された【癒しの奇跡】と呼ばれていた。


 怪我を癒す回復魔法を使えるのは、この世界でたった1人、主人公の聖女アリシアだけだった。


 ゲーム製作陣は、回復魔法なんてクソチートを誰でも使えたら、戦争の決着がつかない。人口爆発で世界が滅ぶから、主人公にしか使えない設定にしたとインタビュー記事で答えていた。


 父上は肩を震わせていたが、やがて怒りを爆発させた。


「魔法など、剣にはるかに劣る! 剣聖どころか、【剣豪】ですらないとは……さてはお前、剣の修行をサボっておったか!?」


 父上や武将たちは、回復魔法の価値が理解できなかったが、俺は違った。

 授かったスキルの効果を噛み締めていた俺は、内心喜びに打ち震えた。


 よっしゃぁああああッ!


 どうやら、神様は俺の願いに最高の形で、応えてくれたらしい。


 なにしろ、回復魔法を極めれば、四肢の欠損すら瞬時に回復できるようになるんだからな。


「これさえあれば、俺は死ななくて済む! 神様ありがとう!」


 嬉しさのあまり、思わず叫んでしまっていた。

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