異世界街作り日記

Dr.cat

第1話

 大学生の主人公、水沼悠は、平凡な日常を送っていた。授業に行き、バイトをし、友人と飲みに行き、そんな繰り返しの毎日。特別なことなど何もない、ありふれた日常――それが彼の安らぎでもあった。


ある日の夕方、コンビニで弁当を買い、帰路についた悠は、ふと空を見上げて「ああ、今日ももうすぐ終わるな」と独り言を呟いた。風は涼しく、街灯が通りを淡く照らす。だが、次の瞬間、悠の視界に異様な光景が飛び込んできた。


巨大なトラックが、彼に向かって突進してくる。


「――ああ、死ぬな……」

心の奥底で、悠は悟ったように目を瞑った。「やっと楽になれる」と、わずかに安堵のような気持ちすら湧いた。


体の横にトラックが触れ、轟音が耳を打つ――次の瞬間、悠は地面に横たわっていた。


意識を取り戻すと、体は全体が痛み、横腹には激痛が走る。だが、最も奇妙なのは自分の周りの光景だった。


赤く光る魔法陣の中に自分がいて、周囲には数人の男たちが立っている。


「――こいつは失敗だ」


男の一人が剣を抜き、悠の方に迫る。直感的に「まずい」と悟った悠は、本能のままに体を起こし、必死で扉へ駆け寄った。剣が振り下ろされる音を背に、悠は外へ飛び出す。森の中、枝葉が身体に擦れ、息が荒くなる。後ろから怒号が響き、男たちの怒りが森を揺るがす。


やっと立ち止まり、森の中で息を整えながら悠は状況を整理しようとした。だが、何も理解できなかった。


「……一体、何なんだ……」


木にもたれかかり息を吐く。


そのとき、後ろから微かな足音が聞こえた。振り向くと、そこには一人の女が立っていた。ピンク色の髪、透き通るような白い肌、目元は整っていて、顔立ちははっきりと美しい。悠は言葉を失い、ただ立ち尽くすしかなかった。


「逃がしてあげる」


女は静かに言った。マントには先ほどの男たちと同じ紋章が描かれている。それを見た瞬間、悠の警戒心は一気に頂点に達した。


「……お前、騙すつもりだろ!」

悠は怒鳴りつける。だが、女の表情は少し傷ついたようで、目には儚い光が宿った。


「騙さないって、誓う」


悠はしばらく黙った。言葉の重みを、無意識に感じ取ったのかもしれない。やがて、渋々頷いた。


「……分かった。とりあえず、近くの村まで送る」


女は静かに言った。悠はただ、ぼんやりとその背中を見つめるしかなかった。森の闇が、二人を包み込む。


──世界が、確実に変わった瞬間だった。



悠の日記:第一話


今日は、まるで夢を見ていたかのような一日だった。

大学の帰りにコンビニで弁当を買っただけなのに、トラックに轢かれかけた。そして目を開けたら、知らない世界にいた。魔法陣だとか、剣を持った男たちだとか……何が起きてるのか全く分からない。


森の中で逃げていると、ピンクの髪の女に出会った。最初は絶対に騙されると思ったけど、騙さないって言ってくれた。……でも、本当に信用していいのかな。


頭が混乱して、体も痛い。今日一日で、自分の世界が全部ひっくり返った気分だ。


でも、少しだけ……不思議と心が落ち着く感じもある。この女と一緒にいれば、何とかなるのかもしれない。

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